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シトシトと、雨が降っていた。
雨水に濡れた草花の匂いが、風にのって、畳の敷かれた部屋に入り込む。
「実弥……遅いな」
湿気を感じて、羽織を脱いだ。
今日のように優しい雨は、風情があるから嫌いではない。
_____俺が風柱邸に居る訳は、任務に出掛ける前の実弥に、夜、時間を取れないかと頼まれたからだった。
任された務めもなく、暇を持て余していたところだったので、断る理由もなく、承諾した。
しかし、ああもあからさまに想いを伝えてしまったあとで二人きりになるというのは、酷く緊張してしまう。
「実弥が帰ってきたら、どういう顔をして話せばいいんだろうな……」
子犬が足にすりよってきたので、頭を撫でてやる。
そいつは、実弥に拾われて、風柱邸で密かに育てられていた。
「っ…………すっきりしないな」
実弥への想いに気づいてからというもの、心が妙に落ち着かない。
じゃれついてくる犬の相手をしながら、実弥になんて言葉をかけてやろうかと考える。
そのとき、
「うぉ」
思いきり飛び付いてきた犬を受け止めきれずに、畳を背に倒れ込んだ。
あろうことか、その犬は倒れた俺の衣服の中にもぐりこもうとして。
「ちょっ…………おい、待て……っ」
返事をする筈もない犬にそう言って、引き剥がそうとするが……_____
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mikitty(プロフ) - 好きです!!!! (2022年12月25日 13時) (レス) id: 75972ecbb8 (このIDを非表示/違反報告)
勿忘草(プロフ) - やっぱり何回見ても最高だなぁ、ぐへへ(( (2020年12月19日 14時) (レス) id: 4fc468f2f2 (このIDを非表示/違反報告)
柴犬(プロフ) - 素敵な作品ですね...、愛情表現や色気のあるシーンがすごく好きで一気読みしてしまいました。他の作品も読ませて頂きたいのですがパスワードというのはどちらで伺えばいいのでしょうか...? (2020年5月30日 9時) (レス) id: 87b58a18e6 (このIDを非表示/違反報告)
ohagi - めっちゃ最高でした。自分も腐ってるのでBLの方がよけい萌えました! (2020年3月31日 14時) (レス) id: 8e8ba22e4c (このIDを非表示/違反報告)
ひつじマイケル(プロフ) - お疲れ様です!読んでいてとても面白かったです!よろしければこれの短編集を読んでみたいです! (2020年3月30日 14時) (レス) id: 37a32601d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たつき | 作成日時:2020年2月29日 20時