時計の針が一周したあとは【Daiki.A】

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トクン

トクン


一度鳴った音は止まることなく、輪唱みたいに重なって私の胸をいっぱいにしていく。


久しぶりに感じる胸の高鳴りを心も身体もちゃんと覚えているの。


止まないその音に身を任せれば、きっと大貴のこと彼氏だって思えるって今までの経験から分かる。


けれど、私の心がそれを阻んでくるから思わず彼に素直な気持ちを溢してしまうの。


「別れたばっかりなの……。」


「えっ？」


私の消えそうな声に大貴の身体がびくっと動く。


「この前、彼氏と別れたばっかりなの。

でも元カレに未練とかあるわけじゃないの。

それなのにこの状況に心が追いついていかないの。」


「あーほらやっぱり。

そりゃ、俺のこと受け入れられないのは当たり前だわ。

だから無理しなくていいって言ったじゃん。」



包んでいた片方の手が離れて代わりにぽんぽんと頭に感じるのは心地良い振動。


「大貴は分かってたの？」


「うん。なんとなくね。

最初に会った時の緊張した感じとかノリとかでね。

確信は無かったけど。」


「すごっ、、

やっぱりプロなんだね、、」


思わず出た言葉に彼は一瞬目を大きく開いてからすぐに下を向いてしまう。


「仕事だからじゃないよ。

Aのことちゃーんと知りたいって思って見てたら分かっただけだから。」

「ごめっ、、」


拗ねた声に思わず出た謝罪の言葉は焦って裏返ってしまう。


「だからなのかな？」


「うん？」


私の言葉に俯いていた彼が顔を上げてくれる。


 
「大貴が私のこと知りたいって思ってくれてるから、私も大貴の前だったら素の自分を出せているのかも。」


「そうなの？」


嬉しそうに口元が綻んだ彼にもっと素直になってしまう。



「本当だよ？ 大貴には自分の素を見せてるの。」


「マジで？

それめちゃくちゃ嬉しい。」



繋いでいない方の人差し指で大貴が鼻を擦る。



その仕草を見て伝えたい事が溢れてくる。



「あのね、大貴もいっぱい素を見せてほしいの。

だって、派遣彼氏のDAIKIと一緒にいてもなんか透明な壁があるみたいなんだもん。

だから、今日は有岡大貴をいっぱい見せて？」

 

「バーカ。」

 
一息で伝えたい事を言葉にすれば、粗野な言葉が返ってくる。



「ちょっと『バカ』って口が悪いよ？」


不満を持ちながら彼を見上げれば、ニヤリと笑った顔を見せてくる。




それを見ていれば手が離れて、代わりに彼の両腕が私の目の前へと伸びてくる。

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