時計の針が一周したあとは【Daiki.A】

AM 09:50 ページ1

約束の時間まであと10分。



これから迎える初めての体験に緊張したせいで、早く着きすぎてしまった待ち合わせ場所。



人が行き交う度に楽しそうな声が周りから聞こえるのは、きっと待ち合わせ場所に指定されたここが、都内からほど近い有名な遊園地の入り口だから。


ガヤガヤに煽られて、さっきから何度も腕時計を確認してるのに全く進まない長い針。



早く、早く10時になって。



流れる軽快な遊園地のテーマ曲のリズムに合わせるみたいに、さっきからキョロキョロと周りを見てしまう。





どんな人なんだろう。





12時間も一緒に過ごすんだから気が合う人でありますように。





さっきから考えるのは遊園地に来るのに普通はしない心配事。





でもそれは仕方のないこと。





だって今から会う彼は“ＤＡＩＫＩ”て名前しか知らない初めて会う人なんだもん。





「うわっ！」



無防備な状態だったから、腕に掛けていたハンドバッグから伝わってきた振動に思いっきり出してしまった変な声。



周りを伺いながら鞄の中からスマホを取り出せば1件の新着メッセージ。



「もぅ、こんな状況にしたのはあなたなんだよ？」



メッセージを確認して、聞こえないって分かっているのについ漏れたのは、この心配を作り上げた大親友へのぼやき。



もう1度、彼女からのメッセージに視線を落とせば皆が知ってるクマのゆるキャラが“頑張れー”て応援しているスタンプが追加されていた。




“イケメンくんと楽しい誕生日を過ごしなよー”





親友のメッセージを再び読み、姿が分からない彼を探すのを諦めてちょうど1週間前の出来事を思い出すの。

one week before→

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す