被害者は多分私【ハイキュー】【宮治】

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結局最寄りの警察署は終点の駅だった。痴漢は終始この世の終わりみたいな顔をしていたし、ド派手な真紅のジャケットを羽織ったおばちゃんに散々詰られていた。イケメンはイケメンで、やはり別の派手なおばちゃんに災難やったなと話し掛けられていて、ホントそれなと思った。


「お手柄やな、お嬢ちゃん」


肩を叩かれて振り向けば、銀歯だらけのおっちゃんが親指を立てて言った。どうも、と返しておいた。





スマホを手鏡にしていたOLのお姉さんが事前に110番してくれたお陰で、痴漢はバスを降りた瞬間に現行犯逮捕された。

お兄さんが腕を捻りあげた痴漢と、お兄さんと、イケメンと、私。さっぱり意味の分からない面子で、警察署に入る。初めて入る警察署は結構広くて、意外にもお年寄りが多かった。

生活安全課に通され、事情を説明し、証拠の動画を見せる。勿論犯人が撮っていたであろう動画についても忘れず言及した。

やはりここでも、気の強そうな中年の婦警さんに「お手柄やん」と褒められた。普通に照れるわ。


事情聴取を終え、書類を作成されてから、別室で事情聴取を受けていたイケメンと共に、婦警さんに案内されて警察署を出た。
午前10時58分。案外時間が経っていた。学校には警察署から連絡が行っていると聞いたから、時間は気にしなくても大丈夫だ。

さっきの婦警さんと別のお巡りさんが学校まで送ってくれるらしい。パトカーだ、と内心ワクワクしながら、ありがとうございますと頭を下げた。

二人がパトカーを取りに駐車場に向かっている間、門衛の警察官に見守られながら私とイケメンは二人きりになった。

･･････気まずい。

何だかんだで、イケメンとはまだ一言も話してない。
被害者の承諾を取らずに声をあげてしまったのは早計だったと今更ながらに思う。そもそも声をあげづらい痴漢の被害で、ましてや被害者が男子高生だなんて、当の本人からすれば知られたくなかったに違いない。

間違った事をしたとは思わないけど。

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