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「は、はあ・・・・・・」
禪院甚爾は、突然の言葉に何とも間の抜けた声を出しました。
男前が台無しです。
「それ程お強ければ、貶してくる相手をけちょんけちょんにできますでしょうに」
「けちょんけちょん」
「ええ、けちょんけちょんです」
呆然と呟く目の前の男に、大真面目に頷きました。
私も夫と死別する前は一介の呪術師でございました。
本家の皆様方があれ程警戒していた理由くらい、会った瞬間に分かりましてございます。
「きっと貴方程お強ければ、坊っちゃまもお認めになられるでしょうね」
「どうだか」
静かに笑って佇む彼に、ふと悪戯な私が心の中でけしかけてきました。
それは一種の賭けでした。
今でも、どうしてその様な事を口走ってしまったのか分かりません。
でも、それだけ彼の強さに惹かれたのだと思います。
私では到達しえなかった、坊っちゃまと同じ目線で語り合える極限を知った目の前の男に。
「これは個人的なお願いなのですが、坊っちゃまの用心棒になっては頂けないでしょうか?」
禪院甚爾は、今度は驚きませんでした。
「ホント突拍子もない事ばっか言うな、アンタ」
「貴方なら、」
一度言葉を切って、俯いて考えたのは坊っちゃまの事。
天使のようなお顔に花笑みを浮かべて私とお話される愛らしいお方。
どんなに願っても、全てを隔絶する無限に愛された坊っちゃまの孤独を理解して差し上げる強さを、私は持ち合わせていないのです。
「貴方なら、坊っちゃまを一人にはさせません」
禪院甚爾はゆっくりと目を見開きました。
長いようで短い沈黙が、美しく哀しい鳥のさえずりを引き立てました。
やがて、俯いていた顔を上げたとき、目に映った彼の表情が、自分の望みが凡そ夢物語である事を語っていて、思わずわらってしまったのです。
「猿には務まれねえよ、ばか」
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更新を随分サボってしまいました。すみません。
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黒豆粉 - ばあやさん素敵。めっちゃ好きです。応援しています。 (2021年8月19日 19時) (レス) id: a216a85358 (このIDを非表示/違反報告)
エリンギ(プロフ) - Ruruさん» ご指摘ありがとうございます! (2021年7月24日 14時) (レス) id: be10dd2e28 (このIDを非表示/違反報告)
Ruru(プロフ) - 甚爾です。甚慈じゃないです。 (2021年7月23日 18時) (レス) id: 633fc41943 (このIDを非表示/違反報告)
エリンギ(プロフ) - らっこさん» コメントありがとうございます!!ばあやと坊っちゃまをどうぞよろしくお願いいたします! (2021年7月17日 10時) (レス) id: be10dd2e28 (このIDを非表示/違反報告)
エリンギ(プロフ) - 巫香渚さん» ありがとうございます! (2021年7月17日 10時) (レス) id: be10dd2e28 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:エリンギ | 作成日時:2021年7月13日 9時