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「昨日あんまり飯食ってなかった」
「そう...だっけ」
「だってAちゃん、いつもなら茶碗三杯は食うでしょ？」
「いつだってそんなに食べてないよ！」
私が笑うと、頭の上の掌も一緒に笑ってるみたいにふわふわ揺れる。
「何かやなコトあったんだね」
「んー...やなコトって言うか、私が悪いから仕方無い」
「人のせいにしないAちゃんは偉いねぇ」
ぎゅうっと抱き締められる。
何だか小さな子供になったみたいで、恥ずかしくて嬉しい。
「うちの社食に残念ラーメンがあるの」
「え？残念ラーメン？」
唐突に始まった智くんの話にちょっと振り返ると、ほっぺたにキスされた。
チュ、と軽く一瞬。
「スープは美味いのに、麺が伸びてるんだよね」
でも彼はキスした事も無かったみたいに普通に話してる。
「もしかして作る人によるのかなー？って一週間くらい続けて食ってみたんだけど、いつも伸びてた」
「確かにそれは残念ラーメンだね」
「だからきっと、あれは元々あーゆー麺なんだろうなぁと思う事にした」
一体これは何の話なんだろう？と思うけど、仕事の件でクサクサしてた心が不思議と落ち着いて来る。
智くんの鼻に掛かった優しい声は、私にとってお薬なんだと思う。
「ねぇAちゃん」
「ん？」
「どっか遊びに行く？」
「今から？」
「うん。どっか行きたい所ある？」
後ろから智くんが私の手を取って、オフィス用にヌードカラーのネイルをしてる指を撫でる。
「可愛い手」と、彼はいつも褒めてくれる。
ちょっと丸っこくてあんまり好きじゃなった自分の手を好きになれたのは、智くんがいっぱい褒めてくれたからだ。
「...今日はのんびりしたいかな」
「うん。じゃあ、そうしよ」
智くんは撫でてた私の指を自分の口元に持って行き、唇を当てる。
目を閉じ指にキスする横顔が綺麗で、見惚れてしまう。
「なに見てんの？」
薄く目を開いた彼が、唇の端を緩く上げた。
そして指から離した唇を、今度は何も言わない私の唇に触れさせ次第に熱を持たせる。
穏やかな智くんが、唯一荒っぽく見える瞬間。
組み敷かれて下から見上げる智くんの顔が、一番好きかもしれない。
「やっぱのんびり...は出来ないかな？」
悪戯っぽく笑う智くん。
その首に腕を掛け、彼を引き寄せた。
心地の良い彼の腕の中。
私はまるで猫になったように、ゴロゴロと智くんの胸に顔を埋めた。
甘いミルクの匂いに包まれる。
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めぐお(プロフ) - 久しぶりに読んだイロコイ。やっぱり大好きなお話です。残してくれてありがとうございます。 (2022年9月16日 16時) (
レス) @page47 id: 17cbbe6ec7 (このIDを非表示/違反報告)
莉依(プロフ) - 何度読んでも、やっぱりイロコイのお話は良い。大好き。 (2019年1月8日 0時) (レス) id: c571097cf8 (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - 結城ちゃんがビール飲めるようになってることに感動です( ；∀；) (2018年8月24日 15時) (レス) id: f393ece0e8 (このIDを非表示/違反報告)
mama(プロフ) - やーっと読むことができました。先生の『行間を読みなさい』が久々に聞けてドキドキしちゃいました。それぞれの恋のはじまりが丁寧に伝わりました。もう、恋をする年齢ではないけれど、お話の中では恋をしていきたいな。レイさん、いつもありがとうございます。 (2018年8月14日 6時) (レス) id: dc084211e8 (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - イロコイ…続きが拝読出来て感動♪それと大野さんの「ともちゃんが猫を拾ったあの時、おれは恋を拾った」に心臓がドキューンと殺られたｗｗｗ (2018年8月8日 21時) (レス) id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：rei
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72
作成日時：2018年5月21日 18時
