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リビングでは彼がソファに座って缶ビールを二本、ローテーブルに並べていた。
「今日はオレ、飲んで大丈夫よね？」
「あ...うん、ちゃんと言って来てる」
「だったら先にオレからも連絡しとくか」
彼がスマホを出して電話を掛ける。相手は私の親だ。
月に二回程度、お互いが一緒に休める日の前日は彼の家にお泊りする。
その時、彼は必ず親に連絡を入れてくれる。
「オレは誠意を見せなきゃいけない人間だからね」と、ちょっと自嘲して。
彼は付き合い始めてからすぐ、私の実家へ挨拶に来てくれた。
私は何だか恥ずかしかったし、相手が元担任って事がどれくらい親にショックを与えるのかも分からなかったから「来て欲しくない」って何度も抵抗したけど和也くんは「往生際が悪いぞ」とそれを許してはくれなかった。
挨拶当日さすがに緊張してるらしい和也くんは自分の名前を言うだけで噛んでたけど、それでリラックスしたのかそこからは当然だけど間違った敬語を使うような事は無く綺麗な言葉でうちの両親に私達の事を話した。
「彼氏を連れて来ます」と言った娘が連れて来たのが元担任だった事に、両親は腰を抜かすほどに驚いていたけど。
お母さんは元々、『二宮先生』のファンだった事もあって彼が帰った後でコッソリ「グッジョブ！」と褒められた。
問題のお父さんも、最初こそ「生徒をそんな目で見ていたんですか？」って厳しい顔をしてたけど和也くんがちゃんと話してくれたお陰で最後には「娘をよろしく」と笑ってくれていた。
「はい、是非是非。アハ、はーい、失礼します」
電話を切った和也くんが「お母さんが今度四人でご飯でも行きましょうって」と、隣に座った私を見る。
「四人って、まさかうちの親と？」
「Aとオレだろうね」
ローテーブルにスマホを置いて代わりに缶ビールを持った彼が、私にも缶を渡してくれた。
お互いの缶を「乾杯」と、軽くぶつける。
「で、本気で一人暮らしするつもり？」
「...うん」
家を出たい理由は、もう一つあった。
それはお泊りの度に和也くんに面倒を掛けたくないから。
彼が親に電話をかけてる間、私は何だか背伸びをして大人ぶってる子供のような気持ちになる。
「Aは一人暮らしがしたいの？それとも、家を出たいの？」
「え？それって何か違う？」
「全然違うよ」
「そうかな...」
「Aの答え次第で、オレがこれから言う台詞が変わるから」
ビールをクイっと飲んだ和也くんが横目で私を見て、その目を細めた。
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めぐお(プロフ) - 久しぶりに読んだイロコイ。やっぱり大好きなお話です。残してくれてありがとうございます。 (2022年9月16日 16時) (
レス) @page47 id: 17cbbe6ec7 (このIDを非表示/違反報告)
莉依(プロフ) - 何度読んでも、やっぱりイロコイのお話は良い。大好き。 (2019年1月8日 0時) (レス) id: c571097cf8 (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - 結城ちゃんがビール飲めるようになってることに感動です( ；∀；) (2018年8月24日 15時) (レス) id: f393ece0e8 (このIDを非表示/違反報告)
mama(プロフ) - やーっと読むことができました。先生の『行間を読みなさい』が久々に聞けてドキドキしちゃいました。それぞれの恋のはじまりが丁寧に伝わりました。もう、恋をする年齢ではないけれど、お話の中では恋をしていきたいな。レイさん、いつもありがとうございます。 (2018年8月14日 6時) (レス) id: dc084211e8 (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - イロコイ…続きが拝読出来て感動♪それと大野さんの「ともちゃんが猫を拾ったあの時、おれは恋を拾った」に心臓がドキューンと殺られたｗｗｗ (2018年8月8日 21時) (レス) id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：rei
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72
作成日時：2018年5月21日 18時
