２ ページ22
その日の帰り際には「マネージャーになります！」と部長さんに宣言していた。
我ながらお手本のような『不純な動機』だなと笑った。
あの日から1年。
私も2年生になって、後輩のマネージャーも出来た。
3年生になった大野先輩は、最後の試合に向けて毎日練習をしてる。
髪は相変わらず金髪で、時々生活指導の先生が体育館まで来て「大野ー！」と怒鳴って彼を連れて行ってしまう。
だけど一度も先輩が黒髪になった事は無い。
理由を聞くと「金髪の方が気合い入るから」って、気合いって言葉とは不釣り合いな柔らかい笑顔を見せられてドキドキが止まらなくなった。
「Aちゃーん、おれのポカリ取ってー」
「はい！」
大野先輩に名前を呼ばれると、胸の奥の辺りがギュッと縮んでしまう。
先輩のユニフォームを洗濯する時は、彼女になった妄想なんかして1人でムフムフする。
先輩に喜んで欲しくてレモンのはちみつ漬けを作ったし、練習試合の時には大量のおにぎりも作った。
それは勿論、他の部員さん達も食べるんだけど大野先輩に「んま」って言われるのが1番嬉しくなるのは仕方無い。
「Aちゃん、バスケ好きなの？」
先輩に訊かれた事があった。
二人きりで近所のコンビニにジュースを買い出ししに行った時。
私、バスケの事は全然知らなかった。
それに運動も苦手だし。
だけど、先輩が好きな事なら！とめちゃくちゃ勉強した。今では結構バスケに詳しい方だと思う。
「はい！好きです！」
でもそう答えたすぐ後に、これは告白するチャンスだったのかもしれない...と後悔した。
だって、「バスケが好きと言うよりも、先輩が好きです」とか少女漫画的な告白が出来るシチュエーションだったのに。
買ったばかりのジュースが入ったコンビニ袋の持ち手をギュッと握る。
その袋を先輩が横から取って、持ってくれた。
「女の子が荷物持ったらだめ」
「あ...でも私、マネージャーですから！」
「マネージャーって召使いなん？違うよ」
「.....」
泣きそうになる。
告白できなかった後悔と、先輩の優しさで泣きそうだ。
「Aちゃん、バスケ好きならさぁ」
「...はい」
「Bリーグの試合のチケット貰ったんだけど」
「.....」
「おれと一緒に行かね？」
「え？私と...？」
「うん。2枚しか貰ってないのに、アイツらに言っちゃうと争奪戦になりそーでしょ？」
先輩の持ってるコンビニ袋がカサカサと音を立てる。
「だから内緒で」
・
私は、とにかく先輩に恋をしていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3404人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
めぐお(プロフ) - 久しぶりに読んだイロコイ。やっぱり大好きなお話です。残してくれてありがとうございます。 (2022年9月16日 16時) (
レス) @page47 id: 17cbbe6ec7 (このIDを非表示/違反報告)
莉依(プロフ) - 何度読んでも、やっぱりイロコイのお話は良い。大好き。 (2019年1月8日 0時) (レス) id: c571097cf8 (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - 結城ちゃんがビール飲めるようになってることに感動です( ；∀；) (2018年8月24日 15時) (レス) id: f393ece0e8 (このIDを非表示/違反報告)
mama(プロフ) - やーっと読むことができました。先生の『行間を読みなさい』が久々に聞けてドキドキしちゃいました。それぞれの恋のはじまりが丁寧に伝わりました。もう、恋をする年齢ではないけれど、お話の中では恋をしていきたいな。レイさん、いつもありがとうございます。 (2018年8月14日 6時) (レス) id: dc084211e8 (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - イロコイ…続きが拝読出来て感動♪それと大野さんの「ともちゃんが猫を拾ったあの時、おれは恋を拾った」に心臓がドキューンと殺られたｗｗｗ (2018年8月8日 21時) (レス) id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：rei
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72
作成日時：2018年5月21日 18時
