君がため (ページ9)

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まるで、そこだけスポットライトがあたって照り輝いているようだった。

こうして真っ正面から向き合って顔を見るのは、初めてのことで、彼女が放つ視線は俺を焼き付ける勢いで放射されている。俺は、それを逸らすことさえも忘れて、ただただ固まって声を失ってしまっていた。

「…聞いてる？」

ズンッと彼女の顔が近づいた時、やっとのことで我に返る。

「え？」

「だから、足！」

何やら彼女は俺の足に向かって指を差している。

呆然としている間、彼女は一体、俺に向かって何を伝えたのだろう。

この現実が夢のようで、どうやら俺は阿呆になっているようだ。

「部活に出るの？」

「…は？ああ、うん」

「どうして？」

どうして？は、こっちのセリフやろ。

突然声を掛けてきた彼女が、なぜそんなことを聞いているのか分からなかった。しかも、あたかも以前から友達同士のような口調で喋っているのだ。

「部活…やから」

「足は大丈夫なの？」

「大丈夫やけど」

それか。

心配してもらえているのは嬉しい。無論、その相手が瀬川Aなのだから尚更だ。

だが、なぜ昨日足を痛めたことを知っているんだ？

俺の疑問に答えるかのように、彼女は口を開いた。

「昨日の帰り、足引き摺ってたから」

合点が行った。
昨日の帰り、俺はだいぶ滑稽な歩き方をしていた。

暇な生徒は帰り、無人の校門を救いだと思っていたのに。見られていたのか…

「何部？」

「サッカー」

返したら、彼女は不安そうに表情を曇らせた。

「なに？」

「使えなくなったらお終いだなって、足」

少しだけ笑って、実に申し上げにくそうに言っている。

「えっと、あなたを責めてるんじゃなくて、ちゃんと大事にして欲しいと思ったから…」

まだ言いたいことはありそうだった。
だがかなり言葉を選んでいるように見える。

頭の髪には反射される天使の輪が見える。

なんやこの天使ちゃん。

「瀬川」

「ん？」

「ありがとう」

言葉が伝わった彼女は、気を付けてね、とだけ言い微笑んだ。

「それと、俺の名前知っとる？」

彼女は誤魔化すようにニコリと笑った。

そうだよな…

"あなた"

さっき彼女は俺をそう呼んだから。

「なが、」

「A！」

自分の名を途中まで口にしたとき、邪魔が入った。

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