第23話ー藤咲あかりー ページ26
チリン、とまた音が聞こえた気がしたから後ろを振り返ってみたけど音の主になりそうなものは特に無かった。
....何か見落としているものなんてあったっけ?
「この音、やっぱり気になるね。麻友の部屋を見終わったら探してみる?」
「ん。そうしよ。」
また璃埜に返事をしながらまたドアノブに手をかける。
また無音。
どこの家に行っても音のなるドアはもうないらしい。
...あのボロっちいアパートを除いて。
ドアを開けた先を見ると前と何一つ変わらない、少し埃っぽくなった麻友の部屋があった。
それでも麻友の匂いが鼻をかすめて、色んな記憶や思い出が脳裏で行ったり来たりして最後にたったひとつの後悔だけが残った。
.......
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「どんなに...、苦しくても...、悲しくても...、2人を.....、初めて出来た私の友達を、
......守るんだ!って...
....だから、だからね.......」
「逃げて!.......早く!!!!!」
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「.............」
.....やめて
私の....、私の大切なものを.....
これ以上.....
..........
「あかり...?」
「ん、ううん。」
あの時麻友は私と璃埜を守ってくれた。
麻友は何も見えないって言った。
視界が真っ赤で私達が見えないって言った。
あのバケモノと同じ真っ赤な目をしていた。
あれは...
バケモノのせい?
だとしたら、今頃麻友は....。
「あかり?...本当に大丈夫?」
「ま、麻友はさ....」
そう、璃埜に話しかけると璃埜は悲しそうな顔をして俯いた。
これから言おうとしていることが分かっているんだろう。
麻友の部屋の奥にある窓に近づき、外にあるものを見下ろす。
真っ赤な目をしたバケモノを見下ろす。
「麻友はさ、あれに....なっちゃったのかな?」
「......」
璃埜は手を握りしめて肩を震わせていた。
「.........
.....................うん。」
長い長い沈黙の後に返事が返ってきた。
少し鼻声っぽかった。
「....ごめん。」
「ううん。いいよ....。」
「........ごめん。璃埜も我慢しなくていいよ。」
「うん....。ありがとう。」
その後は二人して泣いた。
ずっと泣いていた。
しばらくすると泣き疲れて麻友のベッドに寄りかかって寝てしまった。
久しぶりにちゃんとした眠りつけた気がする。
さっきまで明るかった空が暗くなりかけていた。
「腰いて....。」
隣で璃埜は寝息をたてて寝ている。
もう少し寝かせておこう。
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作者名:詩雨・yuuhi | 作成日時:2018年8月10日 19時