第22話ー藤咲あかりー ページ25
映画の中にしかないと思ってた、あまりにも現実離れしている状況に私達はかなり動揺していた。
本当に人を喰うんだとすれば私達が離れた後麻友は....
.......
チリン
ビクッ
「....これ、なんの音?」
家に入ってからずっと鳴っている鈴のような音がふと耳に入って、また肩をビクつかせながら璃埜に聞く。
璃埜は首だけ振って周りを見渡した。
私も同じようにして部屋を見ても特に何も見当たらない。
最初は風鈴かと思ったけどこの部屋に風鈴はない。
この不思議な音に二人して首を傾げつつ、璃埜は提案する。
「麻友の部屋行こっか?」
「ん。二階?」
「確かね。階段は外にあった気がするけど...。」
麻友の家は少し変わっている。
何故か室内に二階へと続く階段がなく、裏庭にそれが設置されている。
だから麻友の部屋に行くためには外へ行かなければいけないのだが....
外、か。
大丈夫だろうか。
今のところは運よく、何とも遭遇していないがいつ何が起こるか分からない状況では外はやはり怖い。
麻友の家に入ってくる時に何も無かったけど
麻友の両親がいつ亡くなったのか分からない以上、裏庭に何も無いとは言えない。
ううん、と首を横に振って変なことは考えないようにする。
リビングの奥にある裏庭に通じるガラス戸を引き、すぐ横にある階段を登り始める。
目を瞑って駆け足で進んでいたから裏庭がどうなっているのかは確認できなかったけど、聞き覚えのある低い唸り声のようなものが聞こえた気がした。
それを聞いてさらに足を速く進めてしまう。
恐怖ってこんなにコントロールが効かないものだっけ?
長らく同じ事を繰り返す酷く退屈な日常を送っていたせいか、ずっと昔に脳に焼き付いて離れなかった「恐怖」という感情を忘れかけていたようだ。
それは良いこととも言えるのだろうが、私は自分がそれを意識せず忘れていたことに少し狼狽えてしまった。
ついさっき忘れてはいけない記憶と言ったばかりなのに....。
「あかり、ドア開けないの?」
いつの間にか階段を登りきっていたのか、目の前にはドアがあった。
「...ん。」
返事をしながら璃埜の顔を見ると心配そうにこっちを見つめていた。
また自分のせいで璃埜心配をかけていると思ったら申し訳なかった。
感謝しなきゃなぁ、なんて思いながらドアを開ける。
一階とは打って変わって、前に来た時とほぼ同じだった。
麻友の部屋のドアノブに手を掛けてそっと息を吐く。
チリン
また音がした。
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作者名:詩雨・yuuhi | 作成日時:2018年8月10日 19時