第19話ー藤咲あかりー ページ21
璃埜が考え事をしている間は私も暇だから私も色んなことについて考えることにする。
......いや、本当はただこれから行く場所でしなければ行けないことから目を逸らしたいだけなのかもしれない。
私達が住んでいる東京から人が極端に少なくなったことにはバケモノのせいだということ以外にもう一つ理由があった。
ほとんどの人が東京から逃げてしまったのだ。
ラジオやテレビ、あとは朋美のメッセージとかからも分かったが何故か東京だけ異常にバケモノの数が多かったのだ。だから人は他県に移動してしまい、今の街の様子じゃあバケモノも東京からは出ていったようだ。
でも、私達のように残った人も居て、麻友の両親も多分残っているはずで.....。
麻友の両親はあまり家に居なかったって聞いたけど何度か会った様子ではすごく優しかったし、一人娘の麻友をとっても大事にしている印象を持った。
そんな人達が麻友を置いて出ていくだなんてそんなことは考えられない。
だから麻友の家に行った時に麻友のことを伝えなければいけない。
もともとそのつもりで「麻友の家に行こう」だなんで言ったけれど、さっきから手の震えが止まらなくて、自分で止めるので精一杯になってしまう。
ましてや面と向かって言うことを、自分でも未だに認めたくない事実を口に出さなきゃいけないこと、それがたまらなく怖いのだ。
......そしてもう一つ、脳裏に浮かんでしまったことも。
でもどうしようにも、もう麻友の家に着く。ここの角を曲がってしまえば麻友の家だ。
小学生の頃から何度も通った麻友の家は変わらず、そこに建っていた。
でも私のアパートなんかとは比べ物にならないほどバケモノが残した傷跡は多かった。
恐る恐るインターフォンに手を伸ばす。
ピンポーン
......
しばらく待っても反応はなく、静寂だけが続く。
それを早く押しのけたかったが静寂が意味してしまうことを認めるのが怖くて何も言えずにいた。
そんな私を見兼ねてか、璃埜が沈黙を破る。
「....入ろっか。」
「....ん。」
黒い扉のドアノブに手を伸ばす。
ここではもう一つの予感が的中しないように祈ることしか出来ない。
でも、開けた扉からする今までの何倍も強くなった鉄の匂いが私の祈りをぶち壊した。
テレビか何かのノイズ音と風鈴のようなものがチリンと音を鳴らしていた。
まっすぐ伸びる廊下とその奥にあるリビングを隔てるガラスの戸は真っ赤に染っていた。
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作者名:詩雨・yuuhi | 作成日時:2018年8月10日 19時