スパイダー【ars M.A】 (ページ2)

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カページ2

走って家に帰った俺は、自分ちを通り越し隣の家へと駆け込んだ。

「こんにちはー！」

お勝手口は、家に誰か居る時はいつも鍵が開いてる。
そこで靴を脱いでると「まー君、いらっしゃい」って声を掛けられた。

「あ！おばちゃん、カズ君居る？」
「部屋に居るはずよ」
「わかった！」

自分ちみたいに、どこに何があるか知ってる家。
リビングの奥にある階段を上がって、2番目のドア。
そのドアを勢いよく開ける。

「カズ君！」
「うっ...わぁ！？」

驚いたカズ君が放り投げた雑誌が俺の足元にバサッと落ちた。

「わ、超ボイン」

その雑誌を拾ってパラパラ捲ってると、不機嫌そうにカズ君が「ノックぐらいしろや、って何度も言わせんな」ってベッドの上で胡座をかいてる。

「カズ君、何かアナログだね」

俺は裸のおねぇちゃんがいっぱい載ってる所謂『えろ本』をパタンと閉じて、彼に返した。

「父ちゃんが隠し持ってたやつ、見付けちゃったからさ」
「えー！おじちゃん、若いね！お盛んだね！」
「でもやっぱ、動いてないおねぇちゃん見てもつまんないね」
「まぁね、俺達はデジタル世代だからね」
「そ。デジタルだからねー」

腹這いになったカズ君がスマホを出してそーゆーサイトを開いたから、ひょいとそれを取り上げる。

「おっ...何すんだよ。見たいなら自分のスマホで見りゃ良いだろ」
「違うの！今日はえろトークしたくて来たんじゃないんだってば！」
「何よ」
「俺、失恋した」

俺が言うと、カズ君は「え？」と目を丸くして上体を起こした。

カズ君は同い年で産まれた時からずーっとお隣さんで、兄弟ってゆーか双子みたいに育てられて来て、こーゆーのって幼馴染って言うんだろうけどやっぱり何か双子って感覚。
全然似てないけど。顔も性格も。

そんなカズ君は、俺のこれまでの恋愛遍歴を全部知ってる。
初恋も、初チューも、初Hも。

「まー君が付き合ってたのって、あの可愛い感じの子でしょ？」
「うん」
「何が気に入らなかったの？」
「別に何も...だって、俺が振られたんだもん」
「あっちから告白して来たくせに？」
「車に乗った大人の男とプーンって走り去ってったよ」

カズ君は「なぁんだ！それ！クソ女じゃーん！」って、何か知らないけど爆笑しながらベッドに転がってる。
笑うとこじゃないんだけど。

「それから、俺ね、恋したの」
「は？」
「失恋して、恋した」
「ちょっと何言ってるか分かんないです」

カズ君が真顔になった。