スパイダー【ars M.A】 (ページ9)

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クページ9

とうとうやって来た日曜日。

約束してた時間よりもずっとずっと早くに目が覚めちゃって、ソワソワしながら時間を過ごした。
でも今日の1時間って200分くらいあるんじゃない！？って思う程に時間が経たない。
1日が48時間に感じてるのに、その上1時間が200分って。
何度時計を見ても、5分も進んでないんだから。

「...落ち着かない」

何してたらあっとゆー間に時間が過ぎてたっけ？
ゲーム？漫画？えっちな動画！...そんな気分じゃない。

ゆっくりした身支度も、とっくに終わってる。

「母ちゃん、何か食べたい」

リビングに行くと、母ちゃんが「パンがあるよ」って教えてくれたからキッチンに行って菓子パンを取ってくる。
それを食べながらソファに座って、母ちゃんと父ちゃんが観てた朝のワイドショーみたいなのを一緒に観てみる。

二人がニュースについて、あーだこーだ言ってるのを聞いてたら退屈で眠たくなってきた。

「珍しく早起きしたと思ったのに、結局寝るの？」

母ちゃんが笑ってる。

「んー...寝ちゃダメ...」

寝たら起きれない気がする！
頑張って目を大きく開くと、父ちゃんが「イケメン！」って褒めてくれた。
いつもなら、うるさいなーって思うのに今日はもっと言って！って思うのは、やっぱりあの子に会いに行くからなのかな。

「行ってきます！」

やっと、やっと、時間が近付いて来て俺は家を出た。
良い天気だし、今日は自転車に乗って。

駅を越えた所に大きな坂道。
風を受けてその坂を下って、少し走ればあの子の家。

「...あ」

聴こえてきた。ピアノの音。

「これも知ってる...」

カズ君がよく弾いてるから、お隣さんからも聴こえてくるやつ。

家の前に自転車を停めて、初めて会った時と同じように庭を覗く。
カーテンの向こう、あの子が今日もピアノを弾いてる。

胸の辺りがぎゅうって、ぎゅうーってなる。

外から声を掛けるなんて事も出来なくて、だからって玄関のチャイムを押すのも勇気が出なくて、ただただピアノを弾く彼女を見詰める。

曲を弾き終えると、彼女は傍らに置いてたスマホを見てからこっちに顔を向けた。
慌ててペコっと頭を下げたら、彼女が走って玄関から出て来た。
俺も門扉の方へ移動する。

「こんにちは」
「あっ...はい、こんにちは...」

あ、モジモジしちゃった。
もっとシャキッとしなきゃ。

「こんにちは！」

言い直したら、彼女が笑った。

よく笑うんだなぁって思ったら、またドキドキする。