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じゃあ、私はこれで行きますね?と看護師さんはどこかへ去り、今は彼女の病室に彼女と二人きり。
さっきまでは気にしていなかったが、病院独特の匂いが鼻にきて、少し顔を顰める。
“薬の匂い、凄いですよね”
そんな俺の様子を見て、彼女はそう書いたメモをこちらに向けた。
はい、なんて返せば、くすくすと笑った彼女。
だけどそれは一瞬で、彼女は真剣な眼差しになったかと思えば、俺の手に自分の手を重ねた。
「え、………っ?」
あまりに突然のことにオドオドしていると、彼女は“聞いていいんですよ”なんて。
(…………聞いていいんですよ、って……そんな)
軽々しく聞いていいものなのか。病院で車椅子に乗って生活しているんだ、きっと軽い怪我じゃないんだろう。
下を向いて黙っていれば、トントンと俺の肩を叩いた彼女。
そっと顔をあげれば、メモ帳が目の前にあって。
“足、生まれつき悪いんです”
ついでに声も、そう付け加えられたメモ帳に、俺は彼女の表情を伺った。
彼女は……笑っていた。
悲しそうに、苦しそうに。
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きゃろっと。(プロフ) - こめさん» コメントありがとうございます!ほ、本当ですか…!?私が涙を拭って差し上げましょう…(?) (2017年12月10日 11時) (レス) id: ce4d5e16ec (このIDを非表示/違反報告)
こめ(プロフ) - きゃろっとさんのお話いつも泣いてしまいます…、めっちゃいい話でした!お疲れ様でした! (2017年12月9日 15時) (レス) id: 7e64236892 (このIDを非表示/違反報告)
きゃろっと。(プロフ) - 風音迷夜さん» コメントありがとうございます!本当ですか、良かった…;;そう言ってもらえてとても嬉しいです…(´>///<`) (2017年12月8日 23時) (レス) id: ce4d5e16ec (このIDを非表示/違反報告)
風音迷夜 - めちゃ良い話でした!僕坂田さん憧れの人なんで、坂田さんの小説見れてよかったです! (2017年12月6日 19時) (レス) id: b791237619 (このIDを非表示/違反報告)
きゃろっと。(プロフ) - 紅鴇ベニトキ@pc垢さん» コメントありがとうございます!そうです私です…(?)こちらこそ読んで頂きありがとうございました…!!;; (2017年12月6日 16時) (レス) id: ce4d5e16ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きゃろっと。 | 作者ホームページ:
作成日時:2017年12月5日 18時