こんにちは、人魚姫【あほの坂田】

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「え……？」



突然の話題に、一瞬思考回路が停止したが、すぐに人魚姫についてを思い出そうとする。

たしか……人魚姫が漁師に恋をして、魔女に人間にしてもらって……。


足と引き換えに声を犠牲にされ、喋ったら泡になって消えてしまう……そんな話だったような。




曖昧な知識の人魚姫を彼女に伝えれば、彼女はコクコクと頷いた。

どうやら大筋はあっていたらしい。

だけど、どうしていきなり人魚姫の話をしだしたのだろうか。分からなくて首を傾げていると、彼女はメモ帳をこちらに向けてきた。




“私、人魚姫が羨ましいんです”



そんな一文から始まった彼女の想いを、目で辿っていく。

何で人魚姫なんて悲しいヒロインが羨ましいのだろうか。最初はそう思っていたが、彼女の気持ちを読み進めていくうちに、俺は胸が苦しくなった。

それと同時に、視界が霞んだ。








“人魚姫は、最後……好きな人に想いを伝えて泡になって消えてしまえるけど、私は泡になるどころか伝えることだって出来てない”



“好きで好きで堪らなくて、悪化していく足を引きずって好きな人に会いに行っていたのに、私は気持ちを伝えられなかった”







“ねぇ、坂田さん”






“今言うのは狡いかもしれないけど、あの日触れた貴方の優しさに惹かれてしまいました”




“貴方なら私を探し出してくれるって思って、此処で待ってしまっていた私を許して下さい”









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