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すいません、暗い話で、と無理矢理口角を上げたような表情をこちらに向けられ、胸が痛くなる
何も言わなくていいですよ、そう言いたげな目をしている彼女に言葉を飲み込もうとしたけど、これだけは言いたい
「…………生きてる理由なんて、誰も分かってないよ」
そう呟いた俺に、彼女は“え……?”と声を漏らした
彼女の瞳を真っ直ぐ捉えながら俺は続ける
「生きてる意味とか、何で生まれたんだろうとか……それは誰も分かってない…………だけど、だけどさ」
“俺と出会えた事に、今まで生きてきた意味を感じてほしい”
言い切った後に途端に恥ずかしくなり、なんてね、と誤魔化すように笑う
だけど、生きてる意味が分からないとずっと悩む位なら、この位の小さな事にも今まで生きていた理由というものを感じて欲しかったから
(………お節介だったかな)
何も反応がない彼女に心配になり、変な事言ってごめんね、そう言おうと口を開きかけたその時
彼女は勢いよく俺に抱きついてきた
────そう、抱きついてきた
「は!?え、ちょ………」
どうしたの、と声を掛けるも、彼女は俺の胸元に顔を埋めるだけで何も言わない
まだ半乾きの彼女の髪から香るシャンプーの匂い、弱々しく俺のシャツを掴む白い手
不覚にも胸の鼓動が早くなっていく
抱き締め返すことに流石に抵抗を感じて、両腕をだらんと垂らす
しばらくそうしていただろうか、彼女は小さな声で俺の名前を呼んだ
「……………そらるさん」
「な、………何でしょう」
「…………貴方に会えて、良かった」
え……と彼女の方を見ると、俺の胸から顔を上げた彼女がこちらを見て微笑んでいた
彼女の瞳からは、まるで星屑のような雫がポロポロと落ちてきていて
“あぁ、綺麗だな”、純粋にそう思った
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通りすがりの乙姫様 - 完結お疲れ様でした!めちゃ感動しちゃいました…!!他の作品も頑張って下さいね!! (2017年12月31日 20時) (レス) id: 3bd615decd (このIDを非表示/違反報告)
(仮)そうけんびちゃ - お疲れ様でした!夢主ちゃんと俺の性格と似つかなくて何かおぉう、、、天使ぃみたいな感じでしたw自分やとあア?つって殴ってましたw (2017年12月24日 10時) (レス) id: 3ca494f799 (このIDを非表示/違反報告)
Mai - 綺麗なお話ですね…!このお話なら長編でも根気よく読めそうです(笑)お伽噺シリーズ、楽しみにしています!(少しだけ、最後に裏切った(?)人に腹が立ちまs(( ) (2017年11月15日 19時) (レス) id: c608e0f4fb (このIDを非表示/違反報告)
世界崩壊轟(プロフ) - なんだこのすごい感動する話。 (2017年11月11日 15時) (レス) id: c47e759a56 (このIDを非表示/違反報告)
刹那(プロフ) - なんか…もう言葉が出ません…最高か…シリーズ化楽しみにしてます…(萌死) (2017年11月6日 21時) (レス) id: df5db280b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きゃろっと。 | 作者ホームページ:
作成日時:2017年11月3日 15時