KING【ars M.A】 (ページ8)

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るページ8

私は、第二秘書(名前だけだけど)ってお仕事も頂いてるから風間さんのお手伝いをしつつ、社長が働いてるのも毎日見てる。

社内でも社外でも、彼は軽やかに仕事をこなす。

ただ、外から『相葉雅紀』という人を見てた時のイメージと、実際の彼の間にギャップを感じ始めた。

時々、制作のスタッフ達が社長室にゲームの企画を持って来てプレゼンする。

私はゲーム好きだって事もあって、この会議に興味津々で。
社長室と一続きになってる秘書室で風間さんと事務仕事をしながらも、耳がダンボ。

ドアを開けっ放しにしてるから、その様子もよく見える。

「ねぇ。これホントに面白いと思って持って来てんの？」

社長が、企画書を机にバサっと投げた。
一瞬で場が凍りつく。

「何とか言えば？」

誰も何も答えない。

「俺が面白くないって言っても、自分が面白いと思ってたら言い返せるよね？」

社長が丸く綺麗な後頭部に手を当てて、髪をワシャワシャと撫で上げる。
それがイライラしてる時の癖だってのは、最近気付いた。

「自信がある物なら、俺を納得させられるプレゼンが出来るよね？違う？」

ハァ...と社長が大きな溜息を吐き出した。

「時間の無駄」

会議に参加してない私まで、固まってしまうような声。
チラ...と風間さんを見ると、慣れてるのか何なのか無反応でパソコンを打ってる。

「俺の時間だけじゃないよ？キミ達の時間も無駄になるって言ってんの。こんな物しか絞り出せなかったなら、最初から正直にそう言えば？」

シンと静まり返った部屋に、風間さんが叩くキーボードの音だけがカタカタと響く。

「適当なモン出して、お茶を濁そうとしないでくれる？」

張りつめた空気の中、突然「Aちゃーん、コーヒー淹れてー」と社長に言われて「はいぃぃ！」って大きな声で返事をしてしまって風間さんにプっと笑われた。

秘書室の端にある小さなキッチンスペースで、会議に参加してる人数分のコーヒーを淹れて

項垂れてるスタッフさん達へ心の中で『頑張って下さい！』と応援しながら、テーブルにカップを置いて行く。

つまんなそうに左手で頬杖をついてる社長の顔は、その手でグイっと持ち上げられて崩れてる。
そんな社長の前にブラックのコーヒーを置く。

デスクには、さっき投げられたゲームの企画書。

『王子様』だと称されてる社長は、決して白馬に乗って現れるような穏やかな人じゃ無い。

黒い暴れ馬を乗りまわして、敵をなぎ倒して行くような人だ。