KING【ars M.A】 (ページ25)

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「俺はね、興味の無いオモチャは最初からオネダリすらしなかった」

社長の目の中に、私が映ってる。

「その代わり、欲しいオモチャはどうにかして手に入れようとしてた」
「.....」
「俺、欲しい物を諦めた事なんか無いよ？」

掌が、私の後頭部を社長の方へと引き寄せる。

「何でも絶対、手に入れてやる」

額と額が触れた。

「どんな手を使っても、ね？」

笑った社長が、顔を離して私の手を掴む。

そして、車のドアを開けて押し込まれた時と同じように強引に外に連れ出された。

何か頭の整理も出来ないし、泣き過ぎてるしでクラクラして、足元もフラフラ。
そんな私を見て社長はまた笑ってるし、もう何が何だか...

「行こっか」
「えっ...どこに...」
「部屋、取ってるから」
「部屋.....部屋っ！？」

この場所で言われる『部屋』なんて、『ホテルの部屋』でしか無くて

なのに、社長は私を引っ張って駐車場からの通用口を通ってホテルのフロントに進む。

「ちょっと...待って下さい！」
「ん？」
「ユキさんは！？」
「ユキちゃん？」

そうだよ、ユキちゃんどうしたの！？
デートじゃなかったの！？
デートの最中に、この人何やってんの！？

「ユキちゃんなら、とっくに帰ったよ」

は...？

「お仕事は終わったし、もう良いよーってギャラ渡して帰って貰った」
「...ギャラ...？お仕事...？」
「あの子、今はモデルなんだけどね？女優目指してるって前から言ってて」

...何の話なの？

「だったら、ちょっと俺のお芝居に付き合ってくんない？って依頼したの」
「お芝居...って...」

私の手を離さないままフロントでキーを受け取った社長が、スタスタとエレベーターホールへと歩いていくから

私も引っ張られて上品な絨毯の上をヨロヨロと歩く。

乗り込んだエレベーターはグングン昇って行く。

「だってAちゃん、全然こっち向いてくんないから」
「.....」
「ヤキモチでも妬かせたらどうかなー？って」
「...何ですか...それは...」
「押してダメなら引いてみな、典型的な恋愛のセオリーでしょ？」

辿り着いた部屋のドアを社長が開く。

「また泣いてる」

私を部屋に入れながら、自分でも流れた事を気付いてなかった涙を拭いてくれた。

「もしかして、泣くほど俺の事好きになってくれてる？」

綺麗な笑顔。

「俺はめちゃくちゃに泣かせたい程、Aちゃんのコト好きなんだけど」

意地悪な笑顔。