KING【ars M.A】 (ページ17)

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衆ページ17

いつものように、風間さんのお手伝いをしてた時

社長と話してた風間さんが戻って来て、私に「風見さん、お願いがあるんだけど」と茶封筒を渡す。

「これ、急ぎで大野さんに持って行って貰えるかな。僕、営業部に行かなきゃならなくて」
「あ、はい。分かりました」

茶封筒を持って秘書室を出ると、社長が「よろしくねー」と微笑んだ。

大野さんの仕事場には、初めて行く。
とゆーか、初対面に近い。
一回、社食で見掛けた。ラーメン食べてた。

AIBER GAMEの中枢と言っても良い、クリエイティブルーム。
ここでたくさんのゲームが！と思ったらウキウキしてしまって、ちょっとミーハー気分でキョロキョロ。

その一番奥のデスクにその人は居る。

椅子の上に体育座りをして、猫背でPCモニターに顔を近付けてる。
指先は、私には理解できない文字の羅列を打ちこんでる。

「すみません、大野さん」
「...ん？」

首は動かさず目だけがチロンと上を向いて、私を見る。

「相葉社長から、こちらを預かって来ました」

茶封筒を渡すと、右手の人差し指と中指で挟むようにして受け取った。
綺麗な指。

「あー、ありがと。前に言ってた資料かなー...」
「では、失礼します」
「ねぇ、キミって相葉くんの運転手さんになったって子？」
「あ、はい。風見と申します」

ふーん...って、大野さんが小さく頷いて

ふふ、って笑う。

「相葉くんの新しいオモチャか」

オモチャ...？

え？

「受け取ったよーって、相葉くんに伝えといてね」
「あ...はい...」

もう私になんて興味無いように、また文字の羅列を打ちこみ出した大野さんに頭を下げてクリエイティブルームを出る。

来た時はあんなにワクワクしてたのに、一気にシュワシュワと気持ちが萎んで行く。

「...オモチャ...」

どーゆー事？

社長室に戻ると、社長が「おかえり」って、やっぱり微笑む。

「...ただいま戻りました」
「ん？どうしたの？」
「え？」
「急に元気無くなった」

社長のその言葉に、秘書室から風間さんもヒョコっと顔を出した。

「そんな事、無いですよ？」
「智くんにいじめられた？」

ちょっとだけ心配してくれてるのかな？って思っちゃう表情で訊かれて

でもまさか『オモチャ』だと言われただなんて言えなくて

「いえ、大好きなゲームを作ってる現場を見てちょっと圧倒されたんです」

そう答える。

社長は「そっか」って、笑う。

風間さんも「お疲れ様」と、笑う。