Laundry【ars K.N】 (ページ6)

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その時30分経って、洗濯が終わった。

私はパイプ椅子から立ち上がって、洗濯機の中からタオルを1枚取り出してみた。

「おぉっ！乾いてる！」

天日干しじゃなくって乾燥機で乾かした洗濯物なんて、やっぱちょっとジメっとしてるのかなー...なんて思ってたけど、パキっと渇いてて驚き。

「当たり前じゃん」

背後から、笑いを含んだ声。
振り向くと口笛兄さんが「ちゃんと乾かないと思ってた？」って、首を傾げる。

「...ちょっと疑ってました」
「しっかり働いてるのに疑われるなんて、可哀想なコインランドリー」
「ですよね、ごめんなさい」

ペコっと洗濯機に向かって頭を下げると、また背後からゲラゲラ笑い声。

「こーゆートコって、家庭用の洗濯機と違ってガスで乾かすらしいよ」
「そうなんだ！物知りですね！」
「フツーでしょ」
「私は知りませんでした！へー！」

ほー！
じゃあ家庭用もガス使えば良いのに。

そんな事を考えながら、乾いた洗濯物をまたショッパーに入れてると

お兄さんの洗濯物も出来上がったらしく、彼も立ち上がって洗濯機の中身をスーパーの袋に入れてる。

フンフン♪と、また口笛。

上手いもんだなぁ...と思いながら自分もちょっと口を尖らせて息を吐いてみたけどヒュー...と空気が漏れただけ。

洗濯物を全部入れて、忘れ物が無いか洗濯機の中を確認して

「あの、私はこれで...」

一応、口笛兄さんに挨拶。

「おぅ。じゃあね」
「はい、さよなら」

洗濯機の前で首だけを捻って私を見送ったお兄さんは、手を挙げてヒラヒラと何かしらの布を振った。

「......お兄さん、ちょっとそれは...」
「...あ！わりぃ。ンフフ、サービスだと思ってよ」
「全然サービスになってないけど...」

その布はどう見ても、ボクサーパンツ。
黄色の派手なやつ。

意外だなー！って思うのに、似合いそー！とも思う不思議。
そして、初対面の男子を見て「黄色いパンツが似合いそう！」って思う私の思考が恥ずかしい。

「あ...じゃあ、さよなら」
「うん、バイバイ」

今度は何も持ってない手を振ったお兄さんに会釈して、私はコインランドリーを出た。

何か...人懐っこいお兄さんだったなー...。

漫画だったら、これが運命の出会いだったりするんだけど

「漫画じゃないしー」

何よりお兄さんゲーム好きそうだったから、お近付きになっちゃ駄目なタイプ。
同じ過ちはおかさない！

まぁ、どうせもう会わないか。

毎日すれ違ってる見知らぬ人達の中の、一人だ。