Laundry【ars K.N】 (ページ36)

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しかし、社長は尚も続ける。

「オレ、絶対にあの人の才能もっと引き出せるよ？あの人がうちに来たらどうなるかって、未来がハッキリ見える」
「フフッ、智くんはあげないよ。智くんの全てをまだ出してないのは、わざとなんだから」
「わざと？」
「最初から全部出したら、飽きられるでしょ？秘密は温めて温めて、皆が欲しがった頃に出す方が美味しいんだよ」

あぁ、相葉社長がやり手だと言われる意味が分かった気がする。
失礼な話に憤るどころか、楽しそうに乗っている。

「二宮社長は『二宮さんをうちにくれ』って言われたってくれないでしょ？」
「オレがオレをAIBER GAMEに？何それ」
「極端な話、うちにとって智くんを外に出すのはそれと同じレベルなの」

相葉社長は、ワイングラスを傾けながら微笑む。

「僕は、貴方の才能を羨んでる。貴方の手腕を尊敬してる。ちょっと妬んでるかも」

二宮社長が、ポカンと口を開けて黙った。

「僕は1人ではここまで来れなかった。智くんが居たから。でも、貴方は1人で全てをやってのけた」

開いてた口を思い出したように閉じた二宮社長が、小さく首を振る。

「1人じゃ無いよ。オレがここまで来れたのも、オレ1人の力じゃない」
「優秀なクリエイターが二天堂にも？」
「まぁそれもあるけど。そこにいる翔ちゃんとかね」
「あぁ、秘書さん」

相葉社長がこちらを見てニコッと微笑んだが、私は社長の言葉に驚いてしまって上手く反応が出来ない。

「確かに優秀そうな方だね。格好良いし！」
「でしょ？翔ちゃんはアクセサリーにもなるよ」
「うちの風間ぽんは良い奴ではあるんだけどねー...ちょっと地味ってゆーか...」

風間さんが「こらっ！」って笑った。
あちらの社長と秘書の関係が、このやり取りだけで分かる。

会食は、思ってたより和やかに。
お互いがお互いを「こいつ、性格悪そー」って面白がって見てる感じが、第三者からはまた面白くて。

「アイツと友達にはなれねぇけど、ま、嫌いじゃない。好きでもないけど」

帰りの車の中で、二宮社長はそう言った。