Laundry【ars K.N】 (ページ4)

今日:2 hit、昨日:6 hit、合計:2,217,398 hit

濯ページ4

口笛兄さんは慣れた様子で、洗濯機の中に袋の中からダイレクトで豪快に洗濯物を入れる。

その袋が、ショッパーとかエコバッグじゃなくてスーパーの袋だったもんでガッサガッサ音がしてる。

そのままお兄さんは、私と対角線になる位置にあるパイプ椅子に座ってスウェットからスマホを出して何やら始めた。

口笛がピタっと止まる。
どうやらスマホの画面に集中してるらしい。

どうせゲームだろう。

スマホゲームなんて、ろくでもない。
何を隠そう、私が元彼と別れた理由はスマホゲームだ。

私と居る時でも、ずーっとゲーム。
話しかけても、ゲームしてるから上の空。
挙句の果てには、ゲームの中の人とチャットしてるんだから静かにしてとか言われて。

アンタは彼女よりも会った事も無い人間の方が大事なのか！？とブチ切れた。

「ゲーム程度の遊びも許してくれないような女、もう付き合えない」と。

何故か私が、お断りされた。

「女遊びよりずっとマシなのに」と。
何と比べてるんだ、バカヤロウ。

ハァァ...。

思わず漏れた大きな溜息に、口笛兄さんがチラっとこっちを見た。

「あ...すいません...」

溜息って良い気分しないよね、と思って謝ると

口笛兄さんはクス、と笑ってまたスマホに目を戻した。

寝起きそのままって感じのペッタンコな髪の毛。

真っ黒で染めてない感じだから、学生さんでは無さそう。
ちょっと無精髭。
幼い顔立ちだけど、きっとそこまで若くは無い...ってゆー雰囲気。

暇だから、思わず口笛兄さんの観察。

サラリーマンかなぁ。
コインランドリーに来るって事は、私と同じで洗濯機壊れたかな？

でも慣れてる感じだったし...あ、お貧乏さん？

そう言えば、そのスウェットは何年物だって位にダルダルだし。
...ってゆーか、私の着てる部屋着もたいがいダルダルだ！今更恥ずかしい！
お貧乏、恥ずかしい！！

「ねぇ」

口笛兄さんの口が小さく開いた。

「ねぇ、って」
「えっ！？私！？」

声を掛けられてる事にやっと気付く。

「他に誰が居んのよ」
「...ですよねー...」

スマホの画面を見たまま、彼がククっと笑った。

「アナタ、そんなにオレが気になんの？」
「...はい？」
「さっきから見詰め過ぎ」

目線をチラっと上げて、私を見た口笛兄さんは

「アナタの視線が熱くて熱くて、汗かきそう」

目を細め、口角をそれはそれは綺麗に上げた。