Laundry【ars K.N】 (ページ23)

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択ページ23

「.......っ！？」

思いっきり振り返ったら、そこには髭オーバーオールじゃなくて

綺麗なスーツを着たカズが、傘を畳みながら私を見てた。

驚き過ぎてパイプ椅子から転げ落ちそうになりながら立ち上がる。

「え...っ！？えぇっ！？」

思わずTV画面と、そこに居るカズを何度も見比べる。

その内、TVからはカズが居なくなってまたアナウンサーが映った。

「な...な...」
「オレの帰って来たタイミング、神がかってない！？すっげぇ漫画みたい」

クフフって嬉しそうに笑ってるカズが「Aの？」って私の黄色い傘を指差して言う。

「あ...うん」
「アハハッ！交通安全って感じだな！」

私の傘の横に、自分の黒い傘を立てたカズの革靴が

コツンとコンクリートの床を打つ。

「...カズ...何で...」
「インタビュー観てたんでしょ？」
「観てたけど...え？だって今、喋ってた...」
「あのVTR生放送じゃねぇよ？二日前だったかなー」

コツコツと私の前まで歩いて来たカズがニコっと笑った。

あぁ、泣きそう。

その笑顔に会いたかった。

「『会いたい人が居るから、今すぐ帰る』ってオレ言わなかった？」
「...言ってた...」

カズの手が伸びて、ソっと私の髪を撫でた。

「誰に会いたかったの？って訊かないの？」

鳶色の目が、また私を映してくれてる事が嬉しくて

鼻の奥がツンとする。

「......会いたかった人の名前...言ってくれないの...？」

カズのジャケットの裾をギュウっと握って言うと、彼は「可愛いコト言うね」って

私のオデコに、キスをした。

「Aに会いたかったの」
「......」
「早く、Aの顔が見たかった」
「......カズ...」

もう会えないと思ってたのに

こんな逆転ホームランみたいな事って、あるの？

漫画だよ。
漫画じゃないとしたら...

「ドッキリ！？」
「はっ！？何だよ、突然！」
「あのTV番組もアメリカの博覧会もドッキリ！？」
「はぁ？んな訳無いでしょ。何で素人が素人にこんな大がかりなドッキリ仕掛けんだよ」

バーカ、って笑ったカズが

「ただいま」

ちょっと照れ臭そうに言うから

「おかえりなさい...」

そう返したら、何故か涙が溢れた。

「何だよー、そんなにオレに会いたかった？」
「会いたかったわ、バカー！」
「アハー！可愛いなー！」

ビエーって子供みたいに泣いてる私を抱き締めて

「オレと『最後のひとつ』の恋、してくれる？」

カズが囁いた。