Laundry【ars K.N】 (ページ3)

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洗ページ3

かくなる上は、洗濯板か...？

「...どこに売ってるの？ってか、まだ売ってるの...？」

床に倒れたまんま考える。

「面倒臭いなぁ...洗濯板...」

手も荒れそうだし...。
腕疲れそうだし...。
昔の人は、偉大だな...。

ゴロン。
寝返りを打つようにして、洗面所の天井を見上げる。

新しい洗濯機も、洗濯板も却下。

どうしたもんか...と考えること、数分。

「.....あ！そうだ！」

ムクっと起き上がり、部屋に戻ってクローゼットの中からビニール製のショッパーを出して来て

洗濯機の中身をその中に突っ込んだ。

そして、それを持って家を出る。

通勤で通ってる大通りから、1本入った普段は入らない路地。

商店が並んでる大通りとは違って、住宅の並ぶ道。

「確かこの辺に...」

キョロキョロと古い町並みを歩いてると

「あっ！あったー！」

それは、昔からきっとそこにあって

この近所の人には、風景の一部。

白い壁に青いペンキで直に描かれた『Laundry』の文字。

所々消えかけてるその文字以外に店名らしき物は無いから、きっとここは『Laundry』って名前なんだろう。

大きく開け放たれてる入口。

コンクリートの床。

両側に洗濯機が並んでて、真ん中に長テーブル。

パイプ椅子が4脚に、マガジンラックと小さなTV。

マガジンラックには『ご自由にお読みください』の張り紙。
小さなTVが乗ってるテレビ台には『お帰りの際は必ず消してください』の張り紙。

「コインランドリーなんて、初体験！」

洗濯機に書いてある使い方のハウツーをじっくり読んでから、洗濯物を放り込む。

動き出した洗濯機を見て、ホッとしてマガジンラックからタウン雑誌を取ってパイプ椅子に座った。

「30分ね。待ちます、待ちます」

１人暮らしだから毎日洗濯する訳じゃないんだし、新しい洗濯機買うよりこの方が経済的かもしんない！

「あー...何か飲み物でも買ってくれば良かったな...」

近くにコンビニはあるけど、洗濯物をそのままにしてこの場を離れるのはコインランドリー初心者の私にはハードルが高い。

雑誌をパラパラと捲る。
デートスポット特集。

すぐにパタンと閉じる。

今の私には洗濯機も無ければ、彼氏も無い。

「あぁぁぁぁ...」

長テーブルに突っ伏して、非リア充な自分に本日何度目か分からない絶望をしていると

何だか軽やかな口笛が聴こえて来て、顔を上げる。

口笛の主は、ダルダルのスウェット上下姿の

色白なお兄さんだった。