Laundry【ars K.N】 (ページ14)

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そんな『一番悪者の元カレ』が、突如私の前に現れたのは

週の始め、憂鬱な月曜日の仕事を終えて帰って来た時だった。

アパートの自分の部屋の前に、その人は立っていた。

「...え...何やってんの...？」
「話を聞いて欲しくて」
「私は何も話すこと無いんだけど...」
「俺、本当に悪かったと思ってるんだ」

ジリジリと近寄って来る元カレからジワジワ逃げるように、後ろ歩き。

「離れてみて、Aがどれだけ大切だったか気付いたんだよ」

あぁ、失って初めて気付く...ってゆーやつ？
ベタ過ぎるでしょう、今更でしょう。

「だから、俺とまたやり直して欲しくて...」
「あー...無理...かなぁ...」
「もうゲームはしないし！ちゃんとAの事、大切にするから！」
「...そーゆーんじゃ無いんだよね...」

ポツリと零れた私の言葉に、元カレは「え？」と目を丸くした。

「私、アナタがゲームばっかりしてるのが嫌だったんじゃなくて2人で居るのに独りぼっちにされてた事が本当に寂しかったんだなぁ...って思った」

だって、カズはずーっとゲームしてるけど私を独りぼっちなんかにしない。

突然私が何か言っても、ちゃんと反応してくれるし

こっちに顔も向けてくれる。

「俺、もうゲームしないよ。ゲームなんて、何の役にも立たないって気付いたし！」
「.....」
「ゲームする奴なんて、クズだなって今の俺は思うし！」
「はっ！？クズなんかじゃないし！」
「...え？」
「あ...」

元カレの勝手な言い分にカッとなってしまった私を見て、彼は何を勘違いしたのか表情が明るくなった。

「まだそんなに俺のこと...」
「え、...えっ！？」
「だってクズじゃないって言ってくれたじゃん！俺ら、やり直せるね！」

ぎゅうっと抱き締められる。

「ちっ...がう！離してよっ！」
「あ、そうだね。続きは、部屋の中で...だね」

ゾゾーって鳥肌。

こないだまで好きだったはずの男なのに、一気にここまで拒否反応が出るって、つくづく女ってのは現実的だ。

尚も抱き着いてる元カレをグイッと引き離す。

「無理！」
「...え？何で。クズじゃないって...」
「アナタの事じゃない！」

ってゆーか、今の私にアナタが入り込む隙間が無いの。
『カズ』って呼び名しか知らないあの人の事で、私の中はもう満席です。

「...ごめんね...」

元カレが泣きそうな顔になる。

「本当に、ごめんなさい...」
「A...」
「...好きな人が出来たの...」

言葉にすると胸の奥がギュっと縮んだ。