Clear-Crane-Crime 9th【arsM.A】 (ページ9)

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289.表裏一体。ページ9

雅紀くんの言ってる事は、正論だった。
間違った事なんか、言ってなかった。

「ううん、そうは思ってないよ」

ただ、こんなに過去とキッパリ決別できる人だったんだ...と思った。

「相手は元カノなんだしそんな言い方しなくても、って思ったでしょ」
「......」

それはちょっとだけ、思った。

「でも、いくら『元カノ』でもAちゃんを傷付けた時点で俺にとっては邪魔者になんの」
「...邪魔者...」
「それがどんな理由であっても、Aちゃんを傷付けて良い理由にはなんない」
「......」
「許せないでしょ、俺の大切なモン壊されるなんて」

また、ゾクリとする。

愛情と憎悪は表裏一体だと言う。
彼は、愛情を持ってた物から興味を失うと一気に冷酷にだってなれる人なんだ。
過去にどれだけ愛していた人であっても、自分の世界を崩されそうになると突き放す。

手に入れたい物を壊してでも自分の側に置いておきたいっていうのは、大切な物を壊して良いのは自分だけって想いの表れなのかもしれない。

私は、いつか本当に彼に壊されるかもしれないし

もしかすると、もう壊され始めてるのかもしれない。

「Aちゃん、100%は信じてなかったでしょ？」
「えっ？」
「伊織さんと何も無かったよって言ったけど、完全には信じられなかったんじゃない？」
「あ...えっとー...」

見透かされてる。
白だとは思えてなかった。
でもグレーなら、もうそれで良いって思ってた。

「だから、三人で会ってちゃんと話そうと思った。Aちゃんに信じて欲しくて」
「......」
「今更あの人が何で俺に？って不自然過ぎたから、残してた連絡先探して誰か何か知らないか調べて」
「...そうだったの？」
「旦那と何かあったんだろうなぁ...とは思ってたけど」

雅紀くんが、小さく溜息を吐き出した。

「Aちゃんに信じて貰えるなら、誰が傷付いても良いって本気で思った」
「......」
「やっぱ酷いか」

アハ、って困ったように笑った雅紀くんの手に自分の指を絡ませる。

「私、雅紀くんにだったら壊されても良いからね」

彼の想いが、他人から見ると少し歪んでたり怖かったりするんだとしても

「だから、雅紀くんを壊して良いのも私だけでしょ？」

きっと、私の想いも似たような物だから。

「フフッ、何それ。えっちな話？」
「え！？違うよ！」
「早く帰らなきゃ！」
「違うってば！」
「いっぱいキモチくしたげるからね？」

彼はもう、子供みたいに耳元で笑ってる。