Clear-Crane-Crime 9th【arsM.A】 (ページ28)

今日:23 hit、昨日:10 hit、合計:1,737,537 hit

308.NOODLES。ページ28

終電の前に、三人は帰って行って

私は珍しく閉店までMIYABIに居る事にした。

一人でベースの上からDJな『マサキ』君を見てると、潤さんが来て一緒にお酒を飲んでくれた。
それに気付いた雅紀くんがプレイ中だと言うのに、思いっきり私達を指差してガン飛ばしてるような顰め面をするもんだから、私が二宮さんの彼女では無くて実は雅紀くんの彼女だったってコトは簡単にMIYABIの中に広まった。

MIYABIが閉店して、始発が動き出して、私と雅紀くんはお互いの頭に寄り掛かりながら眠って電車に揺られる。

雅紀くんが最寄駅で起きて、私を思いっきり引っ張って電車を降りた。
スズメがチュンチュンと爽やかに鳴いてる駅前を、寝ぼけ眼の二人が歩く。
そのまま、雅紀くんちに帰って順番にシャワーを浴びてちょっと一眠り。

目が覚めたのは昼下がり。

「これしか無いや...」

お腹を空かせてキッチンに立った雅紀くんが、カップ麺を私に見せた。

「昼飯、こんなんで良い？」
「うん、全然良いよ。カップ麺好きだし」

電気ケトルでお湯を沸かせて、三分待って。
あっとゆー間にお昼ご飯。

向かい合って、ズルズル食べる。
私はシーフード。
雅紀くんはカレー味。

「ねぇ、Aちゃん」
「んー？」
「ゴールデンウィークなんだけどさ」
「うん」
「休みだよね？」
「うん」

別に食べるのをやめるワケじゃない雅紀くんが、麺を啜る合間に話す。

「俺も休みにしてるから、ちょっと遠出しない？」
「遠出？」
「小旅行」
「旅行！」

わぁ！と背筋を伸ばしてしまった私に、雅紀くんは笑いながら「『小』旅行ね！」って念を押した。

「そんな大した場所ってワケじゃないからさ」
「...どこ？」
「親父んとこ」
「うそ...」

雅紀くんのお父さんの所...？

「あ、もしかして初恋の人に会えるー！とか喜んでんじゃないの？」

彼がちょっと唇を尖らせて、私の顔を覗き込むようにする。

「違う！あ...違うって訳でも無いけど、そうじゃなくって...」

だって相葉先生は大好きだった人だから、会えるのは嬉しい。
だけど、今もっと嬉しいと思ってるのはソレじゃない。

「...私、会わせて貰えるの？」

私が言うと、雅紀くんは口角をキュウっと上げた。

「会わせたいと思ったから、誘ってるんだよ？」

胸がギュっとなって、もうカップ麺なんか食べられない。

「俺の両親に会ってくれる？」

私はただただ頷いて

雅紀くんは、アハッと笑って残ってたスープを飲んだ。