Clear-Crane-Crime 9th【arsM.A】 (ページ25)

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305.夜道。←1.30【LAST】ページ25

その日、少し残業してから地元の駅に着くと改札の向こう、柱に凭れた雅紀くんを見付けた。

思わず駆け足で改札を出ようとしたら、ICカードがちゃんと当てられてなかったのかピンポーンなんて音と共に間抜けな足止めを食らう。
後ろに並んでた人達に迷惑そうにされて、ペコペコ謝ってた私を見て雅紀くんが笑ってる。

恥ずかしさに苦笑いしながら彼の元に走ると、「おかえり」って軽くハグされた。

「引っ掛かっちゃったよ」と照れ隠しに言うと「面白かったよ？」って笑われて、その胸をパンと叩いてくっ付いてた身体を離す。

「雅紀くん、どうしたの？」
「ん？お迎えに来ただけだよ？」
「あ...お迎え...」

こんな事初めてで、嬉しいんだか何だか分かんなくてムズムズ。

「あ...でも、私残業したのに。ねぇ、どれ位ここに居たの？」
「一時間くらいかな？仕事終わってすぐ来たから」
「一時間！？そんなの早めに連絡してくれてたら、帰りの電車乗る時にLINEしたのに」

そしたらその時間に合わせて駅に来れるからそんなに待たずに済んだのに。

「だって驚かせたかったんだもん」

雅紀くんが目尻に皺を寄せて微笑む。
...うぅ...好き過ぎる、この笑顔。死にそう。

「驚いたでしょ？」
「...うん、それはもうドッキリビックリでした...」
「改札に捕まる位だもんね」

ダハハッて雅紀くんが大笑いした雅紀くんが、私と手を繋いだ。
そのまま2人で歩き出す。

「実はね、翔ちゃんから電話あったの」
「櫻井さんから？」
「うん。Aちゃん、翔ちゃんの秘書になったんでしょ？」
「あ...うん」

繋いだ手が、ブラブラと揺れる。

「何かさ、俺には言っとかなきゃって思ったんだって。翔ちゃん」
「そうなの？」
「こんな人事を黙ってたら、俺に東京湾に沈められるとか言って」
「あの人はまたそんな事を...」

ねー、酷いよねー、って雅紀くんが笑ってる。

「いくら俺でもそんな事しないよね」
「そうだよねぇ」
「やっても、富士山の樹海に置き去りにする程度だよね」
「えっ！？」

雅紀くんを見上げたら「ん？」って見下ろされた。

「冗談だよ？」
「あっ...あぁ！冗談か！ビックリした！」
「そんなコトするワケ無いでしょ！」

やだなぁ、って雅紀くんが肩を私の肩にトンっと当てる。

「んで、ニノが来たんだよね？」
「そうなの！ビックリしたー」
「俺はニノから聞いてて、知ってたんだけど」
「えー！教えてよー！」

笑い合いながら、歩く夜の道。