Clear-Crane-Crime 9th【arsM.A】 (ページ16)

今日:5 hit、昨日:7 hit、合計:1,737,580 hit

296.掴み取る。ページ16

月曜の朝、緊張しながら私はキャラメルを補充し、猫部屋を掃除していた。

今日は智さんに、ちゃんと話そう。
櫻井さんとの約束もある。

「おはよー」
「あっ...」

振り返ると、智さんが普段と変わった様子も無く首にグルグル巻いてるマフラーを外してソファに投げていた。

「...おはようございます、智さん」
「寒いねぇ...眠い...」

スタジャン風のコートを脱いで、それもソファへ。
いつものように、それらを集めてハンガーに掛ける。

智さんは、ふわふわと窓辺に歩いてしゃがみ込んで大あくび。

「智さん、ココア淹れて来ますね」
「あ、待って」
「...はい？」
「先に、ちょっと話そっか」

首だけをこっちに向けた智さんが、緩く微笑む。

「...はい」

私も窓辺に行き、彼の隣にしゃがんだ。

「ごめんね」
「え？」
「気まずいでしょ」
「いえ...」

気まずい...とは、少し違う感じがした。
だけど、心地良いかと言われるとそれは違う。

「こないだ、何も言わないで良いって言ったけどさ」
「......」
「やっぱ、聞いとく」

智さんが私を見て、「聞くよ」ともう一度言った。

「...智さん...、私やっぱり...」
「うん」
「雅紀くんが好きで...」
「うん」
「あの後、彼と話し合って...」
「問題は解決した？」

私が頷くと智さんは、ふふっと笑う。

「そっかぁ。良かった」
「...え？」
「もう泣かないで済みそう？」
「...はい」
「じゃあ、めでたしめでたし！」
「智さん...」

智さんが立ち上がったから私も一緒に立ち上がる。
やっぱり、足がジンジンしてる。

「相葉ちゃんにムカついたし、今だって羨ましいし悔しいってのはあるよ」

そう言いながら、彼はクッキージャーに腕を突っ込んでキャラメルを掴み取る。

「だけど、嫌いにはなれないや。だってAちゃんがここに来る前からおれ、相葉ちゃんと友達なんだもん」

戻って来た智さんが、私の右手を取ってそこにたくさんのキャラメルを乗せた。

「これ、ありがとね。いっつも瓶の中がキャラメルでいっぱいなの、嬉しかった」
「......」
「でも明日からは、もう良いからね」
「...え...？」
「翔くんが話あるから、社長室で待ってるって」
「櫻井さんが...？」

智さんが、フゥ...って口を尖らせて息を吐き出した。

「今日も良い天気だねぇ！」

自分の手にひとつ残ってたキャラメルを口に入れた智さんが、クルリと背中を向け

青く大きな空を見上げた。