Clear-Crane-Crime 9th【arsM.A】 (ページ1)

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281.独り言。ページ1

ハァ...と、雅紀くんが小さく息を吐き出したのが聴こえた。

どんな顔をしてるのか想像してみたけど、どれも間違ってる気がしたし、どれもあってる気もした。

「Aちゃん、明日って休みだよね？」
「うん...」
「会ってちゃんと話がしたいんだけど...会って貰える？」

あぁ、雅紀くんらしいな...と思った。
『会おう』でも『会いたい』でも無くて、『会って貰える？』って言い方が凄く雅紀くんらしい。

「...うん、話そ」
「うん、話そう」

また、ハァと今度は大きく息を吐き出したのが分かる。

「ありがとね」
「ううん」
「じゃあ、明日のお昼...12時頃でも大丈夫？」
「うん、大丈夫」
「玉屋で待ってるね」

うん、と応えてから

私も小さく息を吐き出す。

「雅紀くん...」
「ん？」
「私、まだ雅紀くんに言ってない事がある」
「え？」
「私...智さんの家に行きました」
「...うん、でもそれはもう聞いたよ？」

雅紀くんの声は優しい。
やっぱり、この人が好きなんだなと思う。
思って、胸がギュウ...と苦しい。

呼び出されたのが自宅じゃ無くて玉屋なのも、本当は気になってる。
どうして外なんだろう...って。
もしかすると、彼はもう私と離れるつもりかもしれない。
伊織さんの所に戻るつもりなのかもしれない。

なのに、私はやっぱりやっぱり雅紀くんが好きで

好きだから、このままじゃいけないんだと思った。

「...泊めて貰いました」
「え...？泊まった、の？」
「起きたら終電がもう終わってしまってて...勿論、寝た場所は別々だけど泊まったのは事実で...」

こんな事、別に言わなくても良いのかな...って思ったけど、この事実を後から雅紀くんが知ったら気分良いはずが無い。
隠したまま、彼に会うのは卑怯な気もした。

「酔い潰れちゃったんでしょ？」
「...うん」
「それは、俺のせいでしょ？」
「......」
「俺がちゃんとしてたら、Aちゃんがおーちゃんの前で酔い潰れるなんて事は...無かったんだろうし...それを俺が何か言える立場じゃないよ」

淡々と...という感じでは無かった。
ところどころ詰まりながら、雅紀くんは話す。

「でも、隠さず話してくれてありがと」
「...ううん」
「隠し事するなんて、最低だよね。ウソツキと一緒だよ」

独り言のような声。

「雅紀くん...」
「......じゃあ、また明日ね」

また明日、私が言うと電話は切れた。

私は正座をしたまま、暫く部屋の壁を見詰めてた。