Clear‐Crane‐Crime 8th【ars M.A】 (ページ24)

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269.行方不明。ページ24

ピピピ...と、目覚まし時計の音。

寝る前に、始発に間に合うようにと智さんがセットしてくれた。

枕元にあるそれを止めて、まだ重い頭と一緒に起き上がる。

何となく、丸々智さんの服を着てしまうのはイケナイ気がしてスウェットパンツの方だけを借りた。

それをすぐにスカートに履き替え、部屋をソーっと出る。

リビングのソファを見ると、智さんが毛布に包まって寝ていて

その前にあるローテーブルに、鍵とメモ書き。

『Aちゃん、おはよう。
鍵はポストに入れておいて。
また、あとで。』

綺麗な字。

「本当に御迷惑をお掛けしました...」

小さな声で言って、土下座するように正座でペコリ。

「あ...急がなきゃ」

子供みたいな寝顔でスヤスヤ寝てる智さんをチラッとだけ見て、私は鍵を手にして彼の部屋を出た。

始発で家に帰り、お風呂に入る。
起きたお母さんに「朝帰りー？」とからかわれて、アハハーと笑って誤魔化す。

「もー、平日にお泊まりなんて。アンタは良いけど、相葉先生のお仕事の邪魔しちゃダメよ？」
「うん、分かってる...」

部屋に戻りながら、今日は木曜日だから雅紀くん休診日だなぁ...って思い出す。

何するのかな...。

まさか、また伊織さんと...？なんて考えてしまう自分が嫌だ。

いつもは気にならないのに。
木曜日の雅紀くんは、漫画を読んだりドライブしたり気ままな一人の休日を過ごしてるのを知ってるし。

またモヤモヤとして来る胸の中身をハァァ...と吐き出した。
溜息は、心の健康の為になる。
智さんの言葉に救われる。

急いでメイクをして、着替えて、どうにか普段と同じ時間の電車に乗れた。

その電車の中で気付く。

「あれ...？スマホ...」

鞄の中をゴソゴソ探しても見付からない。

「家に忘れた...？」

でも、家でスマホを出した覚えが無い。

自分の行動を思い出してみる。

いつまでスマホはあった？
居酒屋に行く前、智さんちの前ではまだあった。
居酒屋さんで飲んでる時はどうだったかな...あのお店に忘れた？

...あ、違う！タクシー！

タクシーを呼ぼうとして、智さんちの玄関で鞄から出した！
でもそのスマホを鞄に入れた覚えが無い。

「智さんちだ...」

職場に着くと、まだ智さんは来ていない。

急いでたから今日はキャラメルを買って来られなかった。

「おはよ」

掃除をしてると、智さんが出勤して来て

「何時間ぶりかな？」

意地悪な笑顔。