Clear‐Crane‐Crime 8th【ars M.A】 (ページ22)

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267.天井。ページ22

.....マズい.....

見覚えの無い天井を見詰め、一瞬で冷静になった頭で思う。

.....ここはどこだ...なんて、考える必要も無い。

それは分かる。
多分だけど、私の考えてる人の部屋で間違い無い。

ソー...っと自分の隣を見る。

誰も居ない。
シングルよりすこし広めのベッドに寝転がってるのは、私一人。
ひとまず、ホッとする。

そして、祈るような気持ちで布団を捲り自分の身体を覗き込む。

「ハァァ...」

安堵の溜息。
私は上着を脱いでるだけで、しっかりと服を着ていた。

モソモソと身体を起こす。
ふわんと、シーツから柔らかい香り。

「...まだ夜...？」

部屋の中は暗い。
カーテンが閉まってるからってだけでは無さそう。

真っ暗な部屋の端に、間接照明。
その小さな明かりを頼りにベッドから出て、寝室を出る。

ドアを開くとそこはどうやらリビングで、電気が点いてた。

「.....」

顔だけを出してキョロキョロ。

「あ、起きた？」
「.....っ！」

声がした方を見ると、智さんが片手にコーヒーカップを持って立ってた。

「あの...えっとー...」
「あ、何もシてないよ？」
「えぇっ！？」
「それが一番気になってるかなー？と思って」

ズズーっとコーヒーを飲みながら、彼はリビングの奥にあるパソコンデスクの前に座る。

「智さん...私、どーなっちゃったんでしょ...」
「店で『雅紀くーん』って泣きながら寝ちゃった」

.....嘘でしょー...

「ふふっ、『雅紀くーん』は嘘」
「へっ？」
「けど、泣いてたのはホント」

智さんはパソコンに向かって、どうやら持ち帰った仕事をしてる様子。

「寝ちゃったしタクシー呼んで送ろうかと思ったんだけど、Aちゃんち知らないし」
「...ですよね...」
「とりあえず、担いでうちまで帰ってきた」
「担いで...」
「米俵みたいに」
「米俵...」

何か、どんな風に運ばれたのか凄くわかりやすい。
お姫様抱っこやおんぶじゃなかった事に、何だかちょっとホッとする。

あ...今何時！？

壁にある時計に目をやると、もう夜中の1時を過ぎていた。
終電、終わってる...
タクシーか...痛い出費だけど仕方無い。

「智さん...」
「んー？」
「私、帰ります。ご迷惑をお掛けしてしまって本当に申し訳ありませんでした！」

思いっきり頭を下げて、自分の鞄を探す。

「私の鞄は...？」
「玄関」

言われて玄関に行くとそこに鞄と上着が置いてあって

私はタクシーを呼ぼうと、しゃがんで鞄からスマホを出した。