Clear‐Crane‐Crime 7th【ars M.A】 (ページ32)

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242.アドバイス。ページ32

二宮さんの隣に追いついて、並んで歩く。

駅まで、もう少し。

「ねぇ」
「はい」
「でも子さぁ」

二宮さんの喋り方は、個性的だ。
ちょっと舌足らずな感じ。
なのに、何言ってるのかシッカリ聞き取れる不思議な喋り方。

「相葉さんのコト好き？」
「えぇっ！？」

何っ！？何を突然！？
ってゆーか、二宮さん前にも同じ事訊いてこなかった！？
その時と今では全然状況違うけど...

「何でそんな事を...」
「いや、どうなのかなーと思って。好きだよね？」
「それ...は、まぁ...」
「死ぬほど好きだよね？」

当然です！死ぬほど好きです！
好き過ぎて、雅紀くんを見てるだけで泣けてくるほど好きです！

...と答えるのは、やっぱり恥ずかしくて

「そりゃまぁ、彼氏ですからね」

当たり障り無く、答えておく。

「なら、良いの」
「...どうしたんですか？」
「いや、でも子って鈍感でしょ？」
「そうかな...そんな事は無いと思いますけど...」
「あんな露骨だった相葉さんの気持ちにも気付かないんだから、かなり鈍感よ」

そう言われても、雅紀くんが自分を想ってくれてるだなんて考えても無かったから気付かないって。

「だけど、相葉さんは敏感なの」
「雅紀くんが？」
「すっげぇ敏感だから、脆い」
「脆い.....」
「でも脆いくせに、強い」

結局どっちだよ、って思うのに

何だか『強くて、脆い』って言葉は雅紀くんをそのまんま表してるような感じがして

何だか苦しくなって二宮さんを見ると、彼は私の頭をポコンと軽く叩いた。

「そんな顔すんな」
「.....」
「でも子が相葉さんを好きなら、何も問題無いよ」

ポンポン、頭の上で雅紀くんよりは小さな掌が跳ねる。

「離すんじゃないよ？」
「...離す...？」
「相葉さんの手。何があっても、離すな」
「.....」
「好きならね」

二宮さんの口の端が、綺麗に優しく上がる。

「二宮さんって...」
「何よ」
「あの本性を出さなければ、凄い魅力的な人ですよね」
「『あの本性』って何だよ！全部オレの本性だわ！」

頭に乗ってる手で、さっきより強くパコーンと叩かれた。

駅で二宮さんと別れて、一人で電車に乗る。

彼に言われた事を、目を閉じて思い出す。

───相葉さんの手。何があっても、離すな───

自分の掌を眺めて、握り締め拳にする。

...怖くなった。

私がこうしてギュッと手を握っていても、雅紀くんが手を開いてしまったら？

思わず

握った拳に、強く力を込めた。