Clear‐Crane‐Crime 7th【ars M.A】 (ページ29)

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239.ジェンガ。←11.20 ページ29

「わー、ジェンガ！懐かしい」

私が言うと、櫻井さんがこっちを見た。

「Aもやる？」
「やりたいです！」
「じゃあここ、おいで」

チョイチョイと手招きされて、櫻井さんと二宮さんの間に座らされる。
正面の智さんが、ソーっと1本ジェンガを抜いてる最中。

次に二宮さんが難なく抜いて、私の番。

「どこかなー...ここか！」

狙いを定めてソーっと抜き始める。

「なぁ、でも子」
「ちょっと今話し掛けないで下さい」
「トイレから戻って来るの遅かったね」
「.....っそ、そうですか？」

あ...危ない...動揺で崩しちゃうとこだった...

「もしかして、ドクターマサキに個人的な診察して貰ってた？」

ガシャーン。
せっかくさっきの動揺を乗り越えたとゆーのに、次なる動揺には勝つ事が出来ず目の前のジェンガは無惨に崩れた。

にぃのぉみぃやぁ.....

じろりと睨むと、二宮さんはニヤニヤしてる。

「はい、でも子の負けー」
「今のは二宮さんが余計な事を...！」
「余計な事？別にやましい事が無ければ動揺だってしないでしょうよ」

「こら、ニノ」と、櫻井さんが窘めてくれた。
さすがです、櫻井さん。
優しい。ジェントル。

「翔ちゃん、これも勝負に勝つ為の戦略よ？」
「ホント、ニノは負けず嫌いだな」
「当たり前でしょ。どこの世界に『負け』て喜ぶ人間がいんのよ。どんな手を使ってでも勝たなきゃ意味無いの」

言う事が、物凄く二宮さんっぽい。
見た目は中性的なのに、中身がバリバリ男。

「『負け』って、自分が負けたって認めるから『負け』なんだよね？」

智さんが、ポツリと言う。

「智くん？」
「何か大野さん、哲学的だな」

二人の言葉に、智さんはふふっと笑って

「周りから見たら完全な『負け』でも、自分の中で負けてないなら、おれはそれを認めないよ」

壊れたジェンガを積み上げる。

「簡単には負けない」

智さんの言葉に、「オレより負けず嫌いじゃん」と、二宮さんが片方の口角を上げて笑う。

「ビジネスパートナーとして、智くんのそーゆー所！俺はね！すっげぇ好きなんだよ！！」
「うわっ！？翔くん、おもっ！！」

感極まった様子の櫻井さんが、智さんにドーンと抱き着いて(いや、ほぼ体当たり)ジェンガはまたガシャーンと崩れた。

「翔ちゃんが彼女居ないのってさ...」
「あ、二宮さんも思います？」
「でも子も思った？」
「常々」

中睦まじい二人を見て、二宮さんと笑い合う。