Clear‐Crane‐Crime 7th【ars M.A】 (ページ23)

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233.イロモノ。ページ23

「仲良くしてるところ悪いけど」

潤さんがわざとらしく咳払いする。

「雅紀そろそろ下、お願い」
「あ、そうだそうだ。お仕事しなきゃ」

行って来るねー、って雅紀くんが立ち上がって

ヘッドホンを首に掛け、潤さんと一緒にベースを下りて行った。

残った私達は、端から智さん、櫻井さん、私、二宮さんって並んでベースの上から手摺に凭れてフロアを見下ろす。

人の波の中を、雅紀くんが歩いてる。

「あたしのマサキに触んないで！」
「...何言ってんですか」
「でも子の心の声を代弁してあげたんでしょ」

隣で二宮さんがニヤニヤしてる。
でもそう言いたくなるくらい、雅紀くんってば触られてる。

雅紀くんがブースに立つと、一際大きくなる歓声。

それを、彼は唇の前に人差し指を立てる仕草だけで静まらせた。

「本日限定、ドクターマサキの診察室へようこそ」

ぶっ飛んだ雅紀くんの台詞にフロアは大盛り上がりだけど、私はずっこけたし二宮さんは「キッツー！」って爆笑してる。

「アナタの心の隙間、お埋めします」

「なぁ、あれって喪黒福造だよな」と二宮さんが言えば、櫻井さんが「『笑ゥせぇるすまん』だな」と応える。

「ハッピーハロウィーン！！」

いつものように、雅紀くんはピースした腕を高く挙げ

「騒いでくんなきゃ、イタズラするよ？」

挑発するように舌を出すと、その口の中に真っ赤なロリポップキャンディーを入れた。

次の瞬間、MIYABI全体が彼の作る音に包まれる。

「うぅぅぅぅ...」

何だか分かんないけど心臓がバクバクしてその場にしゃがみ込んでしまった。

「おっ！？大丈夫か、A」

櫻井さんが突然しゃがんだ私に声を掛けてくれる。

「大丈夫です...」

這い上がるように立ち上がると、二宮さんが「はぁぁん！格好良い！...とか思ったんでしょ？」って笑う。

何も言えない。
その通りだ。

「ウハハ！あれが格好良いとか、でも子ったら末期だね。かなりイカれちゃってるよ？ドクターマサキ。あれ、イロモノだよ？」
「イロモノかもしんないけど...」

めっちゃ格好良いって思っちゃったんだもん！
胸キュンどころか胸ギュンしたんだもん！
「キャー！」って黄色い声出しちゃってもおかしくない！よく我慢した、私！褒める！

「騒がなきゃマサキに悪戯されちゃうよ？」

面白がるように言う櫻井さんに、二宮さんは「悪戯なんてとっくにされてるに決まってんでしょ、されまくりでしょ」って応えた。