Clear‐Crane‐Crime 7th【ars M.A】 (ページ18)

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228.仮想仮装。ページ18

10月最後の週末。

日付的にはハロウィン当日では無いけど、ミヤビナイトと同じように土曜の夜に『ミヤビンナイト』は開催された。

雅紀くんはDJもするから先に行って準備してるって事で、私一人でMIYABIに向かう。
ミオも誘ってみたんだけど、残念ながら都合が合わなかった。

お店に続く階段の壁に、今晩は『MIYAVIN NIGHT』のフライヤーが何枚も貼ってある。

「ミヤヴィン、なんだな...」

小さな拘りにプっと吹き出して、ドアの前に出してある看板に「ん？」とまた足が止まる。

『JUNBUCKS COFFEE』
チョークでオシャレに描かれた文字。

「...これは...」

まさか、と思いながらドアを開けると増田くんが「いらっしゃいませ、こんばんはぁ！！」と爽やかに迎えてくれた。

やっぱりと言うか、予想した通り彼の格好は黒いシャツに緑のエプロン。
手にはタンブラーを持って、ニコニコしてる。

「スタバだ！」
「ジュンバですよ！」
「アハハッ！」
「こちらどうぞー」

いつも爽やかだけど、二割増し位で爽やかな増田くんに案内されてカウンターまで行くと

「いらっしゃいませー！こんばんはー！」

嘘でしょ...ってテンションの潤さんに迎えられた。

白いシャツに緑のエプロン。
ふんわりと下ろした髪の毛に、いつもより柔らかい笑顔。

「ジュンバックスへようこそ」

言いながら潤さん本人も笑ってしまってる。

「何、お前。それ就活生？」

潤さんと笑ってたら、シラーっと私に言い放つ人。

「...二宮さんこそ、それは詐欺師か何かの仮装ですか？」

頬杖をついてカウンターに座ってる二宮さんは、普通のビジネスカジュアル。
いつもと違う点と言えば、シルバーフレームの眼鏡を掛けてる事位。

「オレは出版社の敏腕編集者」
「分かりづら！」
「地味仮装は分かんなければ分かんない程、面白いのよ」

そう言えば彼の傍らに出版社名の入った(手描きだけど)茶封筒が置いてある。芸が細かい...。

「で、お前は地味なOL？」
「違います！私は、社長秘書です！」

何をすれば良いのか全く分からなかった私は、とりあえずスーツを着て伊達眼鏡を掛けて『社長秘書』って事にしてみた。
髪も、夜会巻きにしちゃったりして。

「秘書ってお前、本業じゃん」
「私は社長の秘書じゃないもん」
「わー屁理屈ー」

「あ、Aちゃん！」

その声に振り返ると

「もう一人本業が来た」

二宮さんが言う通り、スクラブを着てる本業姿の雅紀くんが居た。