Clear‐Crane‐Crime 7th【ars M.A】 (ページ27)

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237.飴の味。ページ27

あー...ポーチ持って来れば良かった。
リップ完全に落ちちゃってるわ...。

鏡に写ったそれこそ地味な自分を横目で見ながら、女子トイレを出ると

通路の壁に凭れて、雅紀くんが立ってた。

何だかトイレから出て来た所を見られたのが照れ臭くて、苦笑いしたら

雅紀くんはニコリともせず近付いて来て、私の手首を掴んだ。

「え...」

そのままグイっと男子トイレまで引っ張られる。

「ちょ...っと、雅紀くん！？そっち私入れないってば！」

ヒソヒソ声で抵抗。
けどそんなの全然聞いてないみたいに、彼は私を男子トイレの中の個室に押し込み

自分も一緒に入って、カチャンと鍵を閉めた。

「ねぇ、雅...っ」

私の声を飲み込むように、雅紀くんが唇を重ねて来る。
普段より、ずっと乱暴に。

「眼鏡、邪魔」

外された眼鏡は、雅紀くんの襟元に引っ掛けられて

狭い個室の壁に背中を押しつけられて、唇をこじ開けるように舌を射し込まれる。

甘い。

さっきまで雅紀くんが舐めてた、ロリポップの味だ。

クラクラする。
目眩。

キスをしながら、雅紀くんは掴んだままの私の手首をスクラブの裾から素肌に導く。

汗で濡れた肌に触れると、お腹の奥の方がキュウっとなって思わず背中に腕を回して彼にしがみ付いた。

それと同時に、雅紀くんの手が私の服の中に入って来て

キスをしてた彼の唇は、首筋に移動する。

「...雅紀くん...どう、したの...？」

上がってしまってる息の狭間で、彼に問う。

だって、こんな風にされた事は無かったから...

「Aちゃん、騒いで無かったから」
「......」
「お仕置き」
「...悪戯じゃなくて...？」
「あ、そっか。イタズラか」

フフッ、って小さく笑った雅紀くんの指先が服の中で動く。

「んっ...」

よく考えたら、スクラブ姿の雅紀くんのこんな顔は見た事無くて

余計にドキドキして、気を抜いたら膝から崩れ落ちそう。

その時、誰かがトイレに入って来た音と気配。

緊張で全身が強張る。

なのに、雅紀くんは何だか愉しそうに目を細めて

また、キスをして来た。

口内を彼の舌がグルンと撫でる。

音を立てないようにその舌先を動かしてるのも分かって、それが妙にいやらしく感じて

何かもう、声を出さないようにするだけで精一杯。

暫くすると、水を流す音、ドアが開く音がして人の気配も無くなった。

その瞬間、彼のキスからは水音が漏れて

私の喉の奥からは、声とも息とも言えないような音が鳴った。