Clear‐Crane‐Crime 4th【ars M.A】 (ページ9)

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114.ナイショ。ページ9

座ったまま私を見上げてる二宮さんが、また少し口を開いた時

「たっだいまー！あー、階段キツい！」

階段を櫻井さんが駆け上がって来た。

「おかえり、翔ちゃん」

二宮さんの視線は、簡単に櫻井さんに向いてしまう。

「相葉ちゃん、やっぱ格好良いね」

戻って来た智さんが私の隣に来て、そこからブースを見下した。

「そう、ですね」

相葉ちゃーん、って智さんは絶対に聞こえないよって声のボリュームで先生を呼んで笑ってる。

「Aさん、飲みますか？」
「あ...、すいません。ありがとうございます！」

潤さんが後ろからジーマの瓶を渡してくれた。
バーカウンターには、前と同じように増田くんが立ってるんだろう。

私の足元に座ってたはずの二宮さんは、いつの間にかちゃぶ台の前に座ってる櫻井さんと潤さんの所に行って3人で談笑してる。

話の続き！って思わない事も無いけど、積極的に聞きたい話では無いかもしれない...とも思った。
どう考えても、あの流れから良い話が出て来るとは思えない。

小さく息を吐いて、隣を見る。
智さんがダルーンと脱力して、手摺にもたれ掛かってる。

「智さん、大丈夫ですか？」
「んー？」
「うるさい場所、好きじゃないって聞いたんで...」
「あー...相葉ちゃんが言ってた？」

はい、って私が頷くと「ふふっ」って笑う。

あ、犬歯見えた。

「何でも食わず嫌いは良くないね」
「え？」
「やかましい場所も、結構楽しい」
「フフッ、そうですか」
「それにさぁ」

智さんが、ふわっと私の耳元に顔を寄せて

そこに手を添えた。
内緒話のカタチ。

「こんなコトしてても、誰も変な目で見ないでしょ？」

小声で囁く智さんの息が、耳にかかる。

「周りうるさくて、声が聞こえないんだろーなーって」
「.....」
「そう思われるもんね」

彼がコソコソ、っと話す。
鼻にかかった少年のような声が、直接耳に入って来る。

「あー、言われてみればそうだね！」

その時、潤さんがちょっとビックリしたような声を出した。

思わず智さんと一緒に振り返る。

「どーしたの？」

智さんの問い掛けに、櫻井さんが「雅紀のコト」って答えた。

それだけの事なのに、心はザワザワ。
何の話？って何だか落ち着かなくなって、瓶に口をつけグビッと飲むと

智さんが、私の手から少し強引に瓶を横取りして

「一気飲み、危ないよ？」

そう言うと、瓶の中身を飲み干してしまった。