Clear‐Crane‐Crime 4th【ars M.A】 (ページ4)

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109.光の海。ページ4

それから暫く5人でお酒を飲んだり、フードを食べたり喋ったり

さっきまで隣にいた智さんは、今はちゃぶ台の所で櫻井さんと二宮さんに挟まれてる。

だけど先生はずっと私の隣に居て

その身体の距離も、変わらなくて

私は緊張状態だからか、お酒を飲んでるのに全然酔えない。
だけど何かフワフワして、夢見心地ってこーゆー事なのかな...。

隣をチラッと見ると、皆と喋ってる先生の指先が食べ終わったキャラメルの包み紙で鶴を折っている。

「あ...そろそろ降りなきゃ」

腕時計を見て、ポツリと呟いた先生が

「ちょっと行ってくるね」って、私の肩に手を乗せて立ち上がった。

「はい...いってらっしゃい」
「フフッ、行ってきます」

うーん、と両手を挙げて背筋を伸ばしてる先生に櫻井さんが「出番？」って訊く。

「うん。行ってくんね」

喋りながら私の前を通った先生を何となく目で追ってると

彼はさっき折ってた小さな鶴を、親指と人差し指の間に挟み

クシャッ、と潰した。

そして歩きながら、潰したその鶴をちゃぶ台に置き

本棚の上にあるガラス瓶の中から、ロリポップキャンディを一本取り出して口に咥え

階段を降りて行く。

横顔の口元から赤いキャンディがチラリと覗いたのが、やけに色っぽくて

妙にドキドキする自分に、何だか恥ずかしくなって来る。

下のフロアからは、女の子がざわついてる声が響いて来て

時々「マサキ！」とか「マサキさーん！」って彼を呼ぶ声もハッキリ聴こえた。

先生がDJをする姿が見たくて、ブースが見える位置に移動して手摺から身を乗り出すようにしてフロアを覗きこむ。

蓄光で光る無数のリストバンドは、前に下で見た時よりも

上から見た方が、光の海のよう。

そんな光の海を、先生は今日もやっぱり泳ぐように歩いて

ピョンと軽くブースに上がると、フロアはいっそう盛り上がる。

光を蓄え突き上げられたたくさんの腕が、ゆらゆらと揺れる。

その向こう側で、先生がヘッドホンを着けた。

何故か...、息が詰まる。

見ていたいのに、見てるのが苦しくなって来る。

むりやり目を逸らす為に後ろを振り返ると

ちゃぶ台に頬杖をついてる智さんが、先生が潰した折り鶴を

綺麗な指でスルリと撫でた。

伏し目がちに鶴を見てる目が瞬きをする度に

長い睫毛が揺れる。

「...智さん...？」

私の声に気付いたのか視線を上げた彼は

「綺麗に折れてたのに、勿体ないね」

小さく微笑み、そう呟いた。