Clear‐Crane‐Crime 4th【ars M.A】 (ページ20)

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125.ガリ勉。ページ20

真っ直ぐな目。

口角は上がってるけど、笑ってる訳じゃ無い。

あの頃出会ってたら好きになったか...は、分からない。

だけど、今目の前に居る先生の事は好き過ぎて苦しい位。

何と答えたら良いのか、分からなくて

何か言おうと口を開けるんだけど、頭がついて来てないから何も声が出ない。

そん私をジっと見てた先生の目が、ユルっと三日月型になった。

「...って、あの頃は俺が恋愛する余裕無かったんだけどね！」

すぐにまたウハハッ！て笑った先生が「ガリ勉だったから！」って掛けても無い眼鏡を指でクイっと上げる振りをする。

「フフッ、ガリ勉ですか」
「超ガリ勉。暇さえあれば参考書読んでた青春」

今の先生からは少し想像できないけど、学ラン姿の先生を思い出すと参考書も似合う気がした。

「子供の頃からちゃんと恋してたら良かったんだろうな。そしたら俺、あんな......」

先生が話してた言葉を突然、切った。

「先生...？」
「あ...ううん。何でも無い」

取り繕うような笑顔。

胸がギュ...って痛くなるような笑顔。

「...先生って男子校だったんでしょ？恋しちゃったら、BなLになっちゃいますよー！」

苦しくなった胸を自分で開放するように、ちょっとフザけて言ってみたら

先生もいつものように「やっぱやだなー、BなLは！」って、笑った。

「でも二宮さんは、モテたんでしょ？男子校で」
「うん。アイツは自分に惚れてる男達を手玉にとって何でもして貰って、課題とか自分では一切やって無かったよーなプレイボーイだったよ」
「えぇぇっ！？」
「でも自分はちゃっかり他校に彼女作ってたけどね」
「うわー...想像できるー...」

小悪魔はその頃からか...いやもう、それ悪魔。

「俺ね、Aちゃんが親父好きだったの分かるよ」

急に言われて、ングって喉が変な音を出した。

「俺も好きだもん、親父。勉強しなきゃいけない運命が憎くて、妙な反抗心は持ってたけど」
「フフッ、はい」

私達は迷う事も無く、駅に辿り着く。
もっと遠くても良かったのに。

「じゃあ、またね」
「はい。...あ！そうだ」

私は鞄から漫画を一冊取り出す。

「これ、次の巻です」
「あ...ごめん！俺、前の持って来てない...どうしよ」
「今度で大丈夫ですから」

そう言うと、先生は私から漫画を受け取って表紙を眺める。

「何か俺、これでアオハルのやり直ししてるみたい」
「私にもこんなキラキラな青春は無かったです」

私達は顔を見合わせて、吹き出した。