アン・コワン・アンソレイエ【 虹 】３

＃１０６ ページ8

ふう と息を吐き出した淳太くんは、しばらく黙ってしまった。



淳太くんのスニーカーと、私のローファーが地面を蹴る音が静かな空間に鳴り響く。


静かだから聞こえる、淳太くんの少し早い足音に無意識に合わせて歩くと、私達の鳴らす足音が重なって。


それすらもなんだか嬉しくて、胸が温かくなる。……淳太くんはわかってないだろうな って色んなことを思い出しているであろう横顔を見上げて思う。






黄『 ………んでまあ、決めたわけ 』


何かを決意したように再び声を発した淳太くんにワンテンポ遅れて うん と頷く。





黄『 もう、無意味に人を好きになるのはやめようって 』


「 ……っ 」


黄『 あいつを好きになったからこそこんなに苦しんでもうたんかなって考えたりとか、自分が好きになったやつの１人も幸せにできひん自分と向き合うのが、怖いねん 』




それだけ好きだったから、淳太くんはその考えに至ったんだ。







黄『 あいつには、ちゃんと自分が選んで好きになったやつと一緒になってもらいたいって思ってる 』


「 …うん… 」


黄『 今でも時々思い出すねん。…淳太のことが嫌いなわけちゃう、せやけど私は心から好きやって思える相手と一緒におりたい、我が儘言うてごめんなって謝ってきた、あいつの泣き顔 』




私は話を聞く時、まずは相手の気持ちを考えるようにしてる。できるだけ同じ気持ちで、相手に寄り添いたいと思うから。


だけど、今回の淳太くんのはよくわからない。




好きな人にそんなことを言われて悲しかったのか、好きな人を泣かせることしかできないって悔しかったのか、好きな人の気持ちが自分にはないことが確実になって寂しかったのか、……それとも、全部？



たくさんの気持ちや感情を、淳太くんは今まで１人で抱え込んできたのかな。


いくら大人っぽくて強い淳太くんとはいえ、そんな無茶なこと、私怒るよ？


無理しないで って、言いたくなっちゃうじゃんか。……きっと、辛いからこそ、無理したいんだろうけどさ。






黄『 バチが当たったんやな。相手の気持ちも考えずに、俺は自分のことしか見てなかったから 』

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