アン・コワン・アンソレイエ【 虹 】３

＃１０５ ページ7

いつも、辛くなる。



過去を思い出すみんなの顔は、ほんとに悲しそうで。……当時の苦しみや寂しさが、その表情からなんとなく、伝わってくるんだ。




だから 無理しなくても良いんだよ って言いたくなるけど、過去を自分なりに受け入れてそれを私に話してくれるみんなの姿を見たら、そんな言葉、飲み込むしかなくなる。



みんなは強く生きているのに、私がこんな弱い言葉言っちゃってどうすんのって話だし。




……だから今回も、淳太くんの横顔を見た私は、ネガティブな言葉は自分の中に閉じ込めた。





黄『 …でも、あいつが好きやった俺の友達は、……急に事故で死んでもうて 』




みんなの過去が負担だと、思ったことはない。


だけど、死というものを目の当たりにしたみんなの話は、やっぱりリアルで。


耳を塞ぎたくなるような話だってあるけど、私はそれを受け入れなきゃいけない。




それが、辛いはずなのに過去を話してくれるみんなに私ができる、唯一の感謝であり、責任だと思ってる。






黄『 葬式の時に俺の隣で泣きじゃくってるあいつのこと見て思った。……俺なんかじゃ、こいつを笑かせたりできひんのやなあって 』




淳太くんだって友達が亡くなって辛かったはずなのに、それでも、好きな人のことを見てたの……？


好きだからこそ、心配でその子のことを見てたんだよね、きっと。






黄『 そしたらなんか、色んなことがどうでも良くなった 』


ははっと、乾いた笑い声が、２人しかいない暗い夜道に響く。





黄『 親父の会社継ぐために必死でしてた勉強とか、…好きっていう感情とか、ほんまに、全部、なにもかも 』


「 …… 」


黄『 ほんで中３の頃に志望校を今の学校に変えた。遠くの街に行きたくて実家出て、じいちゃんのとこに逃げ込んだら、あのシェアハウスを建ててくれた。……親父からはほぼ、勘当されたようなもん。…もう二度とうちに帰ってくんなって言われたわ 』

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