アン・コワン・アンソレイエ【 虹 】３

＃１３７ ページ39

紫『 ああそっか、そうやんな… 』



やっぱりまだ私の反応が気になるのか、崇裕くんはぎこちなさそう。





「 …ごめんね、変な反応しちゃって 」


紫『 いや、俺は大丈夫なんやけど…… 』


「 ちょっと目にゴミが入っちゃって、それに気ぃ取られちゃった 」



我ながらひどすぎるうそだな と思いながら崇裕くんに向かって笑顔を作る。


今は崇裕くんの過去を話そうとしているのに、私がその話の腰を折ってどうすんのよ……。







「 …続き、話してもらえる？………なんでお母さんのことなんて、聞いたの…？」


空気を変えるように聞くと、崇裕くんは それは…… って改めて話を始めるように背筋を伸ばした。






紫『 俺にもな、もちろん、オカンはおってん 』


「 うん 」


紫『 せやけど、俺が小５の頃ぐらいにな、………殺されてん 』


「 …え… 」


紫『 オトンの……、あいつの、…不倫相手に、な…… 』





崇裕くんは オトン と言っただけで、顔を歪めて、わざわざ あいつ と言い直した。


その顔と言葉を見るだけで、崇裕くんがどれだけ父親のことを恨んでいるのかが、よくわかった。







紫『 ほんまはオトンなんて呼びたくないんやけど……、あいつは不倫相手の腹に子供作ってん。……俺も、オカンも、姉ちゃんらもおったのに… 』



ぎゅうっと固められた拳を見て、なんだか苦しくなる。父親に裏切られたってわかった時、崇裕くんも、崇裕くんのお母さんも、崇裕くんのお姉ちゃんも、……どう思ったんだろう。どれだけ、苦しかったんだろう。

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