アン・コワン・アンソレイエ【 虹 】３

＃１３６ ページ38

紫『 どっから話そうかなあ 』



そう言って腕を組んで考え込んでいる崇裕くんは、どこか楽しそうで。



なんでだろう？と思ったけど、これは多分、崇裕くくんの配慮だと思う。


場を重くしすぎないように、私が深く受け止めすぎないように、……崇裕くんなりに考えて、敢えてこういう空気を作り出してくれてるのかもしれない。






「 ………優しいね、崇裕くんは 」


紫『 ん？なんか言うた？』


「 ううん、なんでもない。……崇裕くんが話しやすいところから話してくれて大丈夫だよ 」



……って、過去に話しやすいところなんてないじゃん。そのことに言ってから気づく自分が、なんだか情けない。





紫『 ん〜、まあ、じゃあ、話すで？』


「 うん 」



まるでこれから内緒の話でも始めるみたいに、崇裕くんは小さな声で。






紫『 Aちゃんには、お母さんとか、おる？』


「 ………え…？」




お母さん という単語に、心臓がどきりと跳ねて、ちくちくと痛み始める。


普通ならここで頷くものなんだろう。……私が固まったのが予想外の反応だったのか、崇裕くんは少し困ったような顔をしてる。





紫『 あ、え、もしかして聞かん方が良かった？』


心配そうに聞いてくる崇裕くんに ううん、全然大丈夫だよ って頷く。………私の過去を知らない崇裕くんからしたら、そりゃこんな反応されて困っちゃうよね。





小さく深呼吸をして、また私の心を痛めようとしてくる過去をなんとか追い出した。



顔を上げて、崇裕くんに心配をかけないように笑ってみせる。









「 いるよ、お母さん 」

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