アン・コワン・アンソレイエ【 虹 】３

＃１３２ ページ34

紫『 ……みんな、心配してたで 』



崇裕くんが急に真剣な顔になってそう言うもんだから、驚いて え？って変な声が出る。


脈略もなく唐突に話されたら話が見えなくて普通に戸惑うんですけど……。





紫『 Aちゃんが体調悪そうやから、大丈夫かなって 』


「 …ああ、そういうことね…… 」


紫『 ………………ほんまは、体調悪くなってない、やろ？』



恐る恐るって感じで聞いてきた崇裕くんに、少しびくっとなる。まさか崇裕くんにばれるなんて、思わないじゃん。





紫『 いや、ほんまに体調悪くなってたんなら謝るんやけどさ！』




私が微妙な反応をしたからか、崇裕くんは慌てたようにそう言ってくる。


そんな崇裕くんに 崇裕くんが言う通りだよ って頷いた。




やっぱり…… って呟くように言った崇裕くんは、どこか寂しそう。






紫『 ……なんでうそついてまで、あの場からおらんくなったん？……………俺のせい…？』


そうだよ なんて頷けるわけがない。


確かにあの場からいなくなりたかったのは崇裕くんが原因だけど、他にももっと、言い方があるはずだ。





やっぱり心配そうな表情を浮かべている崇裕くんに笑ってみせても、あんまり効果はなかった。






「 ……崇裕くんは私に可愛いって、言ってくれたでしょ？」




首を傾げると 素直にそう思ったから… なんて崇裕くんは答える。


こういうことをさらっと言っちゃうのは、狙ってるのか、はたまた崇裕くんの天然なのかな？……今の私には、そんなこと、わかるわけない。






「 私ね、それはすごい嬉しかったの。……誰かに可愛いなんて言われたこと、あんまりないからさ 」


紫『 ……Aちゃんは可愛ええのになあ 』




腕を組みながらそう言う崇裕くんに、普通に照れる。


だから ありがと って笑って誤魔化すことしか、私にはできなかった。

＃１３３→←＃１３１

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す