#122 ページ24
橙『 ……でも、無理やった 』
投げ出すように言葉を零した照史くんは 情けないよな って悔しそうに言う。
その言葉に、頻りに首を横に振る。……無力な私には、なにができるのかが、わからない。
橙『 ちょうど今頃やったなあとか、初めて見た時はほんまに可愛かったなあとか、めっちゃ話しかけてたら最初の方は怖がられてたなあとか、………ほんまに、色々 』
「 ……うん 」
橙『 それで1人で抱え込めんくなって、誰かに聞いてほしくて、……せやからAに、過去のこと、話したんやと思う 』
「 そっか…… 」
橙『 こんなやつの話なんて、大事に聞いてくれんでもええんやで?』
投げやりにそう言うくせに、なんでそんなに悲しそうな顔するの……?
そんな顔されたら、放っとけるわけないじゃんか……。
「 …大事なこと話してくれてるのに、適当に聞けるわけないでしょ 」
橙『 …… 』
「 ……みんなの過去を聞く時、私は私なりに、大事に聞いたつもり。……なのに、照史くんだけおざなりにするなんて、無理に決まってるじゃん… 」
照史くんは私の言葉に少し笑った後 ありがとうな って小さく言う。
橙『 ………あいつな、大学で俺以外にも男作ってて、…そこまでならまだ許せたのに、………子供まで作りやがって 』
「 ……っ 」
想像してたよりも暗く重い過去を、照史くんは抱えていた。…そのことに、なにも言えなくなる。
橙『 問い詰めたらひっどい捨てられ方して。……せやけど1ヶ月ぐらいしたら、また俺に泣きついてきた 』
「 …… 」
橙『 話聞いたら、あいつはあいつで、腹の中におる子供の父親に捨てられたんやって 』
照史くんのことをたくさん傷つけておいて、自分が捨てられたら照史くんに泣きつくなんて、どこまで都合の良い人なんだ。
橙『 やっぱり私にはあんたしかおらん、この子を一緒に育ててほしい、傷つけてごめんなさい、………泣きながら俺にそう言ってきたあいつの言葉とか声とか顔とか、今でも鮮明に思い出せる 』
「 うん…… 」
橙『 でもなあ、その姿見て、情けないなって、俺はなんでこんなやつのこと好きになってもうたんやろって、……一言で言えば、幻滅した 』
そう吐き出す照史くんの目は、当時色んなものをなくしてしまったみたいに、色を失っていた。
1768人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ひなこ - 初めまして!とても面白いです!シゲが出てくる度にドキドキキュンキュンしてます! (2021年8月2日 14時) (レス) id: c6b0eb0aa4 (このIDを非表示/違反報告)
ぽっぴん(プロフ) - Yukoさん» コメントありがとうございます〜〜!崇裕くんのことたくさん出しちゃいました!( 笑 ) もうお言葉が嬉しいものばかりでほんとに恐縮です…ありがとうございます…!これからもよろしくお願いします! (2018年5月10日 0時) (レス) id: a5448099dd (このIDを非表示/違反報告)
Yuko(プロフ) - はじめまして。紫担の裕子です。濱ちゃんが登場してきて、ドキドキしながら読んでいます。更新が待ち遠しくて、たまりません。何度も読み返してキュンキュンしています。応援してます。頑張ってください!乱文失礼しました。 (2018年5月6日 16時) (レス) id: 326d509d03 (このIDを非表示/違反報告)
ぽっぴん(プロフ) - 紫春さん» コメントありがとうございます!え!!担当全く同じですよ!私もにのしげ担!!お仲間ですね!すごい!!!なかなか出会わないので貴重です…!これかもよろしくお願いいたします! (2018年4月30日 0時) (レス) id: a5448099dd (このIDを非表示/違反報告)
紫春 - いつも更新楽しみにしてます!!!この話が大好きで、毎日更新待ってます!作者さんはちなみにニノと重岡担ですか?私は二人が担当なので同じだとしたらものすごく嬉しいです!これからも楽しみにしています!! (2018年4月29日 6時) (レス) id: 8db4ba7a0d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぽっぴん | 作成日時:2018年4月20日 20時