アン・コワン・アンソレイエ【 虹 】３

＃１１９ ページ21

「 ん？……うん 」




ほんとに、ただの昔話だと思って、ゲーム画面から目を離さずに頷いた。………なのに。






橙『 俺な、高１の頃、大学１年やった彼女と付き合っててん 』


まさかの告白にぎょっとして、思わず照史くんの方を見ると ガキのくせしてませてるやろ って彼の横顔は笑う。




橙『 ほら、よそ見してたら他のやつらに抜かれてまうで 』


「 …え、……あ、うん… 」




照史くんにそう言われて再びゲーム画面の方に向き直ると、照史くんが操作していたキャラは既に見えなくなっていて、ランキングも２個ぐらい落ちていた。



これはまずい と思って、とりあえずゲームに集中しつつ、照史くんの声に耳を傾ける。






橙『 俺の一目惚れやった。あいつがバイトしてたファミレスにたまたま友達と行って、そこで初めて見て、なんやこの可愛い人はって思ってん 』




照史くんでも一目惚れしちゃうんだ…。


一目惚れされるって、彼女さんはどんだけ魅力的な見た目だったんだろ。






橙『 とりあえず仲良くなりたかったからファミレス通い出して、めっちゃ話しかけた。…同級生にはない大人な落ち着きとか、時々可愛い瞬間見せてくれるとことか、そういう歳上の人やからこそのギャップで更に好きになってん 』




直線コースに入ってちらっと照史くんの横顔を盗み見ると、昔を懐かしむような表情をしていて、だけど目はとてもきらきらしてた。


きっと、そうして彼女にアピールすることが、照史くんは楽しかったんだろうな。







橙『 ほんで、ファミレス通い始めて半年ぐらいかな。…その頃にはもう連絡先も交換してて、何回か遊びに行ってた。……告白してOKもらえた時は、一緒に映画観に行った帰りやった 』





昔話だと照史くんは言っていたけれど、これはきっと、照史くんの過去のことに触れてるんだろう。



どういう結末かもわからないのに、今までの過去の話の影響か、どうしても悪い想像をしてしまう。



だけど OKをもらえた という照史くんの言葉にどこかほっとした私がいたのも、事実だった。


……その安心が、これからの照史くんの話で壊されていくなんて、知らなかったから。

＃１２０→←＃１１８

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す