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「 …いただきます 」
橙『 おうおう、神ちゃんが作ってくれたやつやから絶対美味いで 』
手を合わせてスプーンを手に取る。
照史くんは丸椅子に座って、私の様子をにこにこしながら見ている。
こういう場面では普通、照史くんがスプーンでお粥を掬ってアーンしてくれてるのかと思ってた。
少なくとも、私が観てきたドラマやマンガの中ではそれが普通だった。……現実はそうはいかなったけど。
照史くんは 自分で食べれるやろ ってなんの悪気もない顔で私にスプーンとお椀を渡してきた。
受け取りながら戸惑ったけれど、まあ仕方ない。…あんなにさらっとした感じでいられるってことは、これが照史くんにとっての当たり前なんだろうから。
そういうサバサバしてるところも照史くんらしい。私だって、無駄にべたべたと引っつかれて変に世話を焼かれるよりはこっちの方が良い。
だけど、風邪のせいか、どこか 寂しい と思っちゃう自分もいる。それに、この調子だとどうやって照史くんに甘えれば良いものやら。
照史くんは 頼ってほしい だとか 甘えてくれ って言うけれど、そういう余地がない気がする。
………って、わざわざ休んでまで私の面倒を見てくれている照史くんに文句なんて言えるわけない。むしろ感謝しなきゃいけない。
照史くんは彼女さんができても甘やかさないタイプかもな… と思いながら、私はお粥をスプーンで掬った。
まだ熱は逃げていなくて、お粥は湯気を上げている。
美味しそうな見た目と匂いに、風邪の怠さも忘れて空腹感に襲われる。
口に入れようとすると、
桃『 照史ー!Aさーん!行ってきまーす!』
って、望の大きな声が下から聞こえてきた。
望に続くように 行ってきます!だの はよ治せよ! だの ゆっくり休めよ! だの 照史、Aのこと頼んだで!っていう他のみんなの声がわいわいと飛んでくる。
そんな声に苦笑いの照史くんと共に いってらっしゃい って言うと、みんなは騒ぎながら出ていった。
ドアが閉まる音が聞こえると、照史くんは小さく笑いながらこちらを見た。
橙『 ほんまに声ひどいな、絶対聞こえてないで 笑 』
「 ………私もそれはどっかで思いながら言ってた 」
私の声はひどすぎて届いてるかどうかはわからない。
照史くんと一頻り笑い合って、私はフーフーして、神ちゃんお手製のお粥を食べた。
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ひなこ - 初めまして!とても面白いです!シゲが出てくる度にドキドキキュンキュンしてます! (2021年8月2日 14時) (レス) id: c6b0eb0aa4 (このIDを非表示/違反報告)
ぽっぴん(プロフ) - Yukoさん» コメントありがとうございます〜〜!崇裕くんのことたくさん出しちゃいました!( 笑 ) もうお言葉が嬉しいものばかりでほんとに恐縮です…ありがとうございます…!これからもよろしくお願いします! (2018年5月10日 0時) (レス) id: a5448099dd (このIDを非表示/違反報告)
Yuko(プロフ) - はじめまして。紫担の裕子です。濱ちゃんが登場してきて、ドキドキしながら読んでいます。更新が待ち遠しくて、たまりません。何度も読み返してキュンキュンしています。応援してます。頑張ってください!乱文失礼しました。 (2018年5月6日 16時) (レス) id: 326d509d03 (このIDを非表示/違反報告)
ぽっぴん(プロフ) - 紫春さん» コメントありがとうございます!え!!担当全く同じですよ!私もにのしげ担!!お仲間ですね!すごい!!!なかなか出会わないので貴重です…!これかもよろしくお願いいたします! (2018年4月30日 0時) (レス) id: a5448099dd (このIDを非表示/違反報告)
紫春 - いつも更新楽しみにしてます!!!この話が大好きで、毎日更新待ってます!作者さんはちなみにニノと重岡担ですか?私は二人が担当なので同じだとしたらものすごく嬉しいです!これからも楽しみにしています!! (2018年4月29日 6時) (レス) id: 8db4ba7a0d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽっぴん | 作成日時:2018年4月20日 20時