アン・コワン・アンソレイエ【 虹 】２

＃５６ ページ7

side：A









大ちゃんに口を塞がれたまま、私は大ちゃんの部屋に来ていた。



やっと手を離してくれたから、


「 いきなりなに…！？」


と睨んで息を整える。





赤『 ……あいつらにばれたらだるいねん 』


はあっとため息をついた大ちゃんは、ベッドに腰を下ろした。






「 …なにが 」


赤『 …俺がAに大ちゃんって呼ばせてることがばれるん、だるいねん 』




恥ずかし と顔を両手で覆った大ちゃんは、やっぱり可愛らしい。


大ちゃんってこういう性格だったんだって、緩む頬を抑えながら大ちゃんの隣に座る。





「 私は大ちゃんに呼ばされてるなんて思ってない。私が大ちゃんって呼びたいから呼んでるだけ 」


赤『 …… 』


「 ……っていう理由じゃだめかな 」



顔を覆っている手を外して、覗き込むように大ちゃんと目を合わせる。





赤『 …勝手にすればええやん 』


「 ふふっ、……ありがと 」


赤『 …… 』


「 私はね、大ちゃんに名前呼んでもらえて結構嬉しいよ 」




大ちゃんは私の言葉に驚いたように目を見開いた後 あっそ と呟いて俯いてしまった。





「 じゃ、そろそろ部屋戻るね 」


初めて大ちゃんの部屋に来たんだから、そりゃもうちょっといたかった。


意外と物少ないんだな とか その割に結構散らかってるな とか色々と思ったんだけど。


そんなこと言って気持ち悪がられたら嫌だから、私は大人しく立ち上がった。






赤『 ……A 』


「 ん？」



ドアノブに手をかけた時、大ちゃんに名前を呼ばれて。



振り返ると、何かを手にした大ちゃんがこちらに来て、私の前に立った。







赤『 ……これ 』


大ちゃんがそう言って開いた手には、トランプが載せられていた。






「 …トランプ？」


赤『 この前部屋掃除してたら久々に出てきてん。………また暇な時、一緒にやろうや 』





不器用だなあって、ほんとに見てて微笑ましい。


大ちゃんの前だと、私はどうしても、頬が緩んでしまう。






「 また部屋来て良いの？」


私の言葉に いつでも来たらええやん って大ちゃんはぶっきらぼうに答えた。






「 ありがと。……じゃあ、また来るね 」




おやすみ って手を振ると おやすみ って大ちゃんも手を振り返してくれた。

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